研究課題
我が国では近年、食生活の偏りなどにより潜在的な亜鉛欠乏が増えているといわれている。必須微量元素の1つである亜鉛が欠乏すると、食欲不振、成長遅延、味覚障害などが引き起こされることが知られている。臨床的には、うつ病患者で血清亜鉛濃度が低下しており、これら患者の症状が亜鉛欠乏で進展することなどが報告されてきた。そこで、成長期からの潜在的亜鉛欠乏が精神発達・気分障害に及ぼす影響を明らかにするため、ラットを用いて以下を検討した。1. 潜在的亜鉛欠乏ラットの視床下部外側野におけるモノアミン分泌:亜鉛欠乏食給餌0~4日目の視床下部外側野(LH)におけるモノアミン放出量をマイクロダイアリシス法にて追跡した。その結果、亜鉛欠乏食給餌0、2日目では変化が認められなかった。しかし、亜鉛欠乏食給餌4日目から、高カリウム刺激時におけるノルエピネフリン、セロトニン放出量が低下傾向を示した。2. 潜在的亜鉛欠乏ラットの脳脊髄液中亜鉛濃度:昨年度は、亜鉛欠乏食給餌6日目のみ脳脊髄液を採取し亜鉛濃度を測定したが、変化は認められなかった。そこで、亜鉛欠乏食給餌0~4日目に脳脊髄液を採取し、亜鉛濃度を経日的に追跡した結果、亜鉛欠乏食給餌3日目より低下傾向を示した。しかし、個体差が大きく詳細な検討が必要である。3. 潜在的亜鉛欠乏ラットのスクロース嗜好率:ラットのスクロース嗜好性は、本来「快」として高値を示すが、うつ様症状の無欲により低下すると報告されている。一昨年度は、マルトースに対するスクロース嗜好率を経日的に追跡し、亜鉛欠乏食給餌6日目以降で低値を維持することを明らかにした。そこで、水に対するスクロース嗜好率の経日変化を追跡した。しかし、群間で変化が認められなかったことから、ラットのうつ様症状をスクロース嗜好率で評価する際、マルトースに対するスクロース嗜好率の追跡も有効である可能性が考えらえた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
Nano Biomedicine
巻: 8 ページ: 67-73
Biomedical Research on Trace Elements
巻: 27 ページ: 162-169
BMC Complement Altern Med
巻: 16 ページ: 442-442
10.1186/s12906-016-1427-z
Biosci Biotechnol Biochem
巻: 80 ページ: 791-797
10.1080/09168451
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol
巻: 310 ページ: R459-R468
10.1152/ajpregu.00439