研究実績の概要 |
トリプトファン代謝経路において、アミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSD)、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)、キノリン酸ホスホリボシルトタンスフェラーゼ(QPRT)は、神経毒キノリン酸の産生に影響を及ぼす鍵酵素である。これらの酵素は食品成分によって活性が変動する。しかし、その詳細な分子レベルでのメカニズムは明らかではない。本研究ではそのメカニズムの一部を明らかにすることを目的とした。 本年度はACMSDの発現に関わる可能性があり、ある種の食品成分により発現が変動する転写因子 (HNF4α) に着目し、検討した。一方、昨年度は炎症を誘発させたミクログリア細胞において、ケルセチンがキノリン酸を増加させるIDOを抑制することを示した。そこで、本年度はその作用機序について検討した。 転写因子結合予想部位に変異を導入あるいは導入しないACMSDプロモーター領域を組み込んだレポーターベクターを用いてレポーターアッセイを行った。さらにゲルシフトアッセイも行った。 ACMSDプロモーターの5'上流に存在するHNF4α結合予測部位が、ACMSD転写活性を上昇させることを示した。さらに、ゲルシフトアッセイを行い、HNF4αの結合予測部位に、この転写因子が結合するか否か検討したところ、結合することが示唆された。 炎症を誘発したミクログリア細胞におけるケルセチンのIDO抑制機序に関して、検討した。その結果、ケルセチンはmitogen-activated protein kinase(MAPK)経路の一部を介してIDOに作用することを示した。
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