研究課題
マルチリガンド受容体として知られるRAGE(receptor for advanced glycation end-products)は種々のリガンドと結合して細胞内シグナルを誘発し、その結果、糖尿病血管障害、がん、炎症、アルツハイマー病等の病態を悪化させる。それ故、RAGEシグナルを阻害することは、RAGE関連疾患の予防・治療にとって重要である。研究代表者らは日本古来の発酵調味料である醤油から得られる低分子画分にRAGEシグナル阻害成分が含まれることを初めて明らかにした。そこで本研究は、醤油由来低分子画分に含まれる新規RAGEシグナル阻害成分の実体とその阻害メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、この目的を達成するために以下の2つの実験を行った。1.ヒトesRAGE(endogenous secretory RAGE)親和性カラムに醤油低分子画分を添加し結合画分を塩で溶出した後、逆相クロマトグラフィー(Cosmocil 75C18-OPN column)により脱塩を行い、醤油低分子画分中に含まれるRAGE結合成分を得た。2.ヒトRAGEを過剰発現し、RAGE依存的にNF-kBの活性化を介してルシフェラーゼレポーターの発現を検討できるラットC6グリオーマ細胞に醤油由来阻害成分の有り無しでリガンド刺激を与えて検討を行った。その結果、RAGEシグナル依存的にRAGEがラフトに局在し、醤油低分子画分によりラフトへの移行が阻害されることが明らかになった。以上、醤油由来の低分子画分が、RAGEのラフトへの移行を阻止することによりRAGEシグナルを阻害していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ヒトesRAGE(endogenous secretory RAGE)親和性カラムに醤油低分子画分を添加し結合画分を塩で溶出した後、逆相クロマトグラフィー(Cosmocil 75C18-OPN column)により脱塩を行い、この画分を醤油低分子画分中に含まれるRAGE結合成分を得ることができた。また、ヒトRAGEを過剰発現し、RAGE依存的にNF-kBの活性化を介してルシフェラーゼレポーターの発現を検討できるラットC6グリオーマ細胞に醤油由来成分の有り無しでリガンド刺激を与えて検討を行った。その結果、RAGEシグナル依存的にRAGEがラフトに局在し、醤油低分子画分によりラフトへの移行が阻害されることが明らかになった。これらは概ね実験計画通りであり、順調に進展していると考えられる。
平成28年度は、醤油低分子画分より得られたRAGE結合成分の中のRAGEシグナル阻害成分を明らかにするため、醤油由来RAGE結合性低分子画分を質量分析装置にかけてその実体を明らかにする予定である。
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Gastric Cancer
巻: 18 ページ: 1-14
10.1007/s10120-015-0579-8
Glycative Stress Res
巻: 1 ページ: 25-31
http://biochem2.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html