研究課題/領域番号 |
26450153
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中村 宗一郎 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00105305)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アミロイド性タンパク質 / フェニルプロパノイド / グリコ・リポフィル化フェルラ酸 / 量子ドットプローブ / 抗アミロイド効果 |
研究実績の概要 |
本研究は,天然に広く分布するフェニルプロパノイドに着目し,それらに,長さや性質の異なる糖鎖や脂肪アルコール鎖を付加した複合体ライブラリーを作成し,量子ドットで蛍光標識したアミロイド性タンパク質をプローブに用いて標的タンパク質固有の抗アミロイド性新素材の分子設計を行うことを目的とした。平成26年度は,まず,酵素合成法によるフェニルプロパノイド複合体の調製を行った。すなわち,市販の桂皮酸及びその誘導体にβグリコシダーゼ及びリパーゼによって長さや性質の異なる糖鎖,脂肪アルコール鎖あるいはその両方を付加することを試みた。その結果,典型的なフェニルプロパノイドの一つであるフェルラ酸のグリコシル化,リポフィル化及びグリコ・リポフィル化に成功した。そこで,次に,これらのフェニルプロパノイド複合体の抗アミロイド活性を簡易・迅速に追跡することができるよう,量子ドットプローブの調製を試みた。プローブの本体には,アミロイドβ(Aβ)及びアポリポプロテインII(apoA-II),ヒト型シスタチン(L68Q),ヒト型ステフィンA及びB(HSA及びHSB)を用いた。まず,Aβ及びapoA-IIは化学的合成法によって,L68Q,HSA及びHSBはピキア酵母発現系によってそれぞれN末側にシステイン残基を付加し,そのシステイン残基にリンカー(sulfo-EMCS)を介して量子ドット(QD-PEG-NH2)を結合させた。こうして作成した量子ドットプローブを用いてグリコシル化フェルラ酸,リポフィル化フェルラ酸,グリコ・リポフィル化フェルラ酸の抗アミロイド効果を調べたところ,リポフィル化及びグリコ・リポフィル化はフェルラ酸の抗アミロイド効果を有意に上昇させることが明らかになった。このことは,チオフラビンT法及び電子顕微鏡観察によっても追認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,アミロイド性タンパク質のN末端側にシステイン残基を導入することによって量子ドットと結合させることに成功した。こうして作成した量子ドットプローブを用いて,代表的なフェニルプロパノイドであるフェルラ酸のグリコシル化,リポフィル化及びグリコ・リポフィル化複合体の抗アミロイド活性を測定し,リポフィル化及びグリコ・リポフィル化がフェルラ酸の抗アミロイド効果を有意に上昇させることを明らかにした。現在,カフェ酸やクロロゲン酸等,分子の一部にC6-C3構造を持つフェニルプロパノイド化合物に長さの異なる糖鎖や脂肪アルコール鎖を付加して様々なタイプの複合体を調製中である。こうして,当初に掲げた目標どおり,標的タンパク質固有の優れた抗アミロイド効果を持つ新素材の分子設計を継続し実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで本研究はおおむね計画通りに進展している。平成27年度は,アミロイド性タンパク質をプローブの本体として調製した量子ドットプローブに加え,アミノ酸残基数4個~8個からなるアミロイド性オリゴペプチドをベースとしたユニバーサル量子ドットプローブの作成も試みる。ユニバーサルプローブを用いて新規抗アミロイド性フェニルプロパノイド複合体の分子設計の加速化をはかる。得られた優良候補化合物については,培養細胞,老化促進モデルマウス及びアミロイドーシス発症モデルショウジョウバエを用いた実験も行う。こうして,新生フェニルプロパノイド複合体の抗アミロイド効果の汎用性について検討する。また,新規物質の安全性の評価と食生活への利用形態についての検討も加え,ヒトに安全な抗アミロイドーシス食品素材の創製に資することができるようにする。
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