研究実績の概要 |
本研究はフェニルプロパノイド系抗アミロイド性新素材の創製を目的としたものである。また本研究では、アミロイド形成阻害活性の測定に量子ドットによって蛍光標識化した探索子(量子ドットプローブ)を用いていることを特長としている。平成26年度はアミロイドβ(Aβ)に量子ドットを付加したAβプローブを用いて、グリコシル化及びリポフィル化がフェニルプロパノイド系化合物の抗アミロイド効果に及ぼす影響を調べた。供試フェニルプロパノイドには桂皮酸及びその誘導体を用いた。βグリコシダーゼ及びリパーゼによってフェニルプロパノイド複合体を調製した。種々検討の結果、至適修飾鎖長があるもののリポフィル化の有効性を確認することができた。平成27年度は多様なアミロイド性タンパク質に対して、アミロイド形成状態を高感度かつ定量的に測定することが可能な「ユニバーサル量子ドットプローブ」の開発を試みた。標的タンパク質にはAβに加えて、アポリポプロテインII、ヒト型シスタチン、ヒト型ステフィンB、インスリン及びリゾチームの6種類を用いた。文献情報を参考にプローブの分子設計を試みた結果、量子ドットにCLIVAGDから成るペプチドを付加したものをユニバーサルプローブLD6として提案することができた(特願2015-126857)。最終年度である平成28年度は、生体系におけるリポフィル化フェニルプロパノイドの効果を中心に検討した。① ヒト神経芽細胞腫由来SK-N-SH細胞及びマウス初代培養ニューロンを用いた神経保護効果、②Aβ過剰発現ショウジョウバエ (GAL4-elav/+, AS-Aβ42/+)の運動能力保持効果、及び③線虫Cenorhabditis elegansの寿命延長効果を調べたところ、フェルラ酸ブチルエステル及びカフェ酸ヘキシルエステルの有効性が示された。
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