H28年度は,Lineweaver-Burkプロット解析によるWTFRとWTFR-ペプチドフラグメント(以下PF)の組み合わせによる相乗効果メカニズム解析,WTFR-PFの高血圧自然発症ラット(SHR)への単回経口投与試験による降圧作用確認,WTFRおよびWTFR-PFの血管組織中再構成液の高血圧自然発症ラットへの単回経口投与試験による降圧作用の相乗効果を確認した。 まず、in vitro試験で相乗効果を引き起こす組み合わせを調べた結果、WTFR+WT、WTFR+WTF、WT+FR、WT+TFR、WTF+TFR、WTF+FRの組み合わせで、理論値を上回る相乗効果が確認された。アンジオテンシン変換酵素(ACE)は、2つの活性部位であるCドメインとNドメインが存在するが、Lineweaver-Burkプロット解析の結果、WTFR、WTF、TFRは両活性部位に結合する混合型の阻害様式、WTはCドメインにFRはNドメインに選択的に結合する拮抗阻害様式でACEを阻害していると考えられた。そして、WT+FR混合溶液は、両活性部位に結合する混合型の阻害様式を示し、それぞれ単独の酵素阻害から見積もられる理論値よりも高い酵素阻害活性を発言した。つまり、WTFR-PFの組み合わせによる酵素阻害の相乗効果は、ACEのCドメインとNドメインの両結合部位にすることに起因すると結論付けられた。 この相乗効果のin vivoでの効果を確認するため、WT、FRおよびWT+FRのSHRへ単回経口投与試験を行った結果、それぞれ単独よりも強い降圧作用が確認され、生体内での相乗効果を確認した。また、WTFRおよび血管組織中WTFR-PF再構成液のSHRへの単回経口投与試験では、再構成液がより強い降圧作用を引き起こし、WTFR-PFの降圧作用への寄与および相乗効果が確認された。
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