γ-トコフェロール(γ-TH)は植物油中に多量に含まれており、高い抗酸化作用を示すことが知られている。本研究では、ミセル溶液と生体膜モデルであるリポソーム中でのリン脂質ヒドロペルオキシドの分解反応に対する効果から、γ-THの抗酸化作用機構を検討した。 1-パルミトイル-2-リノレオイルホスファチジルコリン(PLPC)からヒドロペルオキシド(PLPC-OOH)を調製し、ヘミン(Hem)触媒によってミセル溶液中でγ-THと反応させた。その結果、γ-THはPLPC-OOH由来のフリーラジカル種を捕捉して付加体(γT-OO-epoxyPLPCとγT-epoxyPLPC)を形成するだけでなく、生じた二量体(γ-TD)もフリーラジカルを捕捉して同様の付加体(γTD-OO-epoxyPLPCとγTD-epoxyPLPC)を形成した。次に、Hemまたはミオグロビン(Mb)触媒によるPLPC-OOH過酸化二次反応に対するγ-THの効果をミセル溶液中で検討した。PLPC-OOHミセルにHemまたはMbを添加すると、PLPC-OOHの急激な分解に伴ってヘキサナール(Hex)と4-ヒドロキシ-2-ノネナールが生成した。γ-THは、これらのアルデヒド生成を濃度依存的に抑制し、その抑制能はα-THと同程度であった。また、反応生成物としてγ-THキノン、トコレド、γ-TD、および本研究で明らかにした4種の付加体を確認した。一方、本反応をリン脂質リポソーム中で行うと、生成するアルデヒドは主にHexであり、γ-THによるHexの生成抑制能はα-THに比べて低いものであった。 以上の結果より、γ-THは均一ミセル溶液中ではα-THと同様にPLPC-OOHのレドックス分解で生じたフリーラジカル種を捕捉することで脂質過酸化二次反応を抑制できるが、その抑制作用はリポソーム中では低下することが明らかとなった。
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