研究実績の概要 |
植物二次代謝産物であるファイトケミカル(phytochemical)は、抗がん作用や抗肥満作用など様々な生理機能性を示すことが報告されてきた。しかし、その作用メカニズムについては不明な点が多く、これが過剰摂取した際の副作用などの要因となっていると考えられる。著者らは最近、「ファイトケミカルが細胞タンパク質へ非特異的に作用し、これが熱ショックタンパク質(HSP)などのタンパク質品質管理機構を活性化する現象」を見出し、この新奇な作用メカニズムを「プロテオホルミシス(proteo-hormesis)」と命名した(BBRC, PLoS ONE, 2013)。本課題ではまず、東南アジア産食用植物ハナショウガ根茎の主成分であるゼルンボンに着目し、そのタンパク質ストレス作用(proteo-stress)が本化合物の生理機能性に関与するのか否かを検討した。その結果、RAW264.7マクロファージにおける数種の炎症メディエーターの誘導や産生にゼルンボンのタンパク質ストレス作用が関与していることを見出した(PLoS ONE, 2016)。さらに、このユニークな作用機構がファイトケミカルに広く見られるものか否かを検討するため、数種のファイトケミカルについて、in vitro(マウス小腸粘膜ホモジネート)やin vivo(マウス胃内強制投与)でタンパク質ストレス作用が観察されるかを検証した。その結果、in vitroおよびin vivoにおいて香辛料ターメリックの主成分であるクルクミンを始めとするいくつかのファイトケミカルが小腸粘膜におけるタンパク質を一部不溶化することを証明できた。一方、線虫を使って、クルクミンのHSP誘導能を世代別に評価したところ、若年世代に比べて老年世代の誘導能は顕著に減弱しており、ファイトケミカルによるタンパク質品質管理機構活性化能は加齢とともに減衰する可能性が示唆された。
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