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2014 年度 実施状況報告書

HPLC-ESR法による農作物のスーパーオキシドラジカル消去活性物質の精密解析

研究課題

研究課題/領域番号 26450158
研究機関京都工芸繊維大学

研究代表者

田嶋 邦彦  京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50163457)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードスーパーオキシドラジカル / 青果物の抗酸化活性 / HPLC-ESR装置開発
研究実績の概要

HPLC-ESR装置は青果物など水抽出試料の含有成分をHPLCカラムで分離し、それらの活性酸素ラジカル消去活性を電子スピン共鳴分光法(ESR)装置によってオンライン評価することを目的として開発した複合的な分析装置である。この装置はカラムの下流に小型の溶液混合装置を有し、カラム溶離液にスーパーオキシドラジカル(SOR)の生成とESR検出に必要な混合する。本システムでは、リボフラビンの光還元反応で生成したSORとスピントラッピング試薬(DMPO)の反応で生成するDMPOのSOR付加ラジカル(DMPO/O2)を観測対象とし、そのESR強度の時間変化としてカラム溶出成分のESRクロマトグラムを記録する。
平成26年度は、HPLC-ESR装置で観測するESRクロマトグラムの線形、ピーク強度および面積強度が、それぞれSORに対するDMPOと抗酸化物質の競争反応に基づくと仮定して計算を試みたところ、実測の線形と計算線は良好に一致したことから、ESRクロマトグラムの線形解析に目処が立った。さらに、SORとの反応速度が既知のコーヒー酸(CA)を基準物質として、ESRクロマトグラムのピーク強度と面積強度から溶出成分のSOR消去活性を定量化する解析法(CA換算濃度法)を確立した。たとえば、ほうれん草のESRクロマトグラムの強度解析から、主要な抗酸化活性成分はスピナセチンおよびフラボノイド類であり、それらが抗酸化活性に寄与する割合(比抗酸化活性)をそれぞれ約24および18%として定量的に解析した。ESRクロマトグラムの定量的な解析法を確立したことで、本研究課題の主要な目的であった青果物水溶性成分のSOR消去活性の精密解析を実現するための技術的及び理論的な準備はほぼ完了した。次年度は、品種、産地および収穫時期が異なる青果物のHPLC-ESR分析を遂行することで、青果物の品質と機能性を左右する含有成分の同定と帰属を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題で独自に開発したHPLC-ESR装置は、ESRクロマトグラムとしてカラム溶出成分のSOR消去活性を計測する独創性の高い複合的な分析装置である。本システムを青果物に含まれる抗酸化活性物質の精密解析に応用するには、ESRクロマトグラムの定量的な解析が必須であるが、本年度の研究によって目的を達成しただけでなく、既知物質の換算濃度としてESRクロマトグラムの強度を数値化できたことは予想を上回る成果である。また、ESRクロマトグラムの強度解析が実現した背景には、HPLC-ESR装置の信頼性が向上しただけでなく、多数の未知試料を分析する過程における経験の蓄積がある。

今後の研究の推進方策

今年度は主要な青果物(ほうれん草、キャベツ、レタス、人参など)について産地、耕作技術および収穫時期が異なる作物を選択し、これらの水抽出液を測定対象としてHPLC-ESR分析と解析を進める。同品種の青果物のHPLC-ESR分析結果の比較から、青果物の抗酸化活性と品質を左右する含有成分(key compounds)を探索したい。そのためには、HPLC-ESR分析結果から高い抗酸化活性を有するカラム溶出物を分取し、その分子構造をNMR、質量分析および高分解能なHPLCMS分析法などを併用して帰属する。これまでに、青果物の水抽出液の抗酸化活性は混合試料を対象に実施されてきたが、本研究で開発したHPLC-ESRによって、主要な含有成分の抗酸化活性の解析が実現した。今年度は、主要な含有成分の帰属と同定を推進することで、青果物の水溶性成分が有する抗酸化活性の精密解析を推進する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Quantitative Spin-trapping ESR Investigation of Alkoxyl Radical Derived from AAPH: Development of a Flow-injection Spin-trapping ESR System for the Oxygen Radical Absorbance Capacity Assay2015

    • 著者名/発表者名
      A. Nakajima, T. Yamashita, T. Yamaguchi, K. Kawai, Y. Miyake, K. Kanaori, K. Tajima
    • 雑誌名

      Applied Magnetic Resonance

      巻: 46 ページ: 1026-1033

    • DOI

      10.1007/s00723-015-0664-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Application of a Flow-injection Spin-trapping ESR Method for Evaluating the Alkoxy Radical Elimination Capacity (AREC) of Selected Antioxidants2015

    • 著者名/発表者名
      A. Nakajima, T. Yamaguchi, K. Kawai, Y. Miyake, K. Kanaori, K. Tajima
    • 雑誌名

      Chemistry letters

      巻: 44 ページ: 印刷中

    • DOI

      doi:10.1246/cl.150121

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] HPLC-ESR法によるカラム溶出成分のO2-・消去活性評価方法2015

    • 著者名/発表者名
      山口智子, 田中宏治, 三宅祐輔, 金折賢二, 田嶋邦彦
    • 学会等名
      日本化学会 第95春季年会
    • 発表場所
      日本大学 理工学部船橋キャンパス
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] Superoxide radical scavenging activity of cooked rice as studied by HPLC-ESR spin-trapping measurements2014

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Yamaguchi , Gen Httori, Kenji Kanaori, Kunihiko Tajima, Isamu Tachimoto
    • 学会等名
      APES-IES-SEST 2014
    • 発表場所
      東大寺文化センター
    • 年月日
      2014-11-12 – 2014-11-16
  • [学会発表] HPLC-ESR法による炊飯米の水溶性成分のO2-・消去活性評価2014

    • 著者名/発表者名
      山口 智子, 服部 玄, 金折 賢二, 田嶋 邦彦, 舘本 勲武
    • 学会等名
      61回日本食品科学工学会
    • 発表場所
      中村学園大学
    • 年月日
      2014-08-28 – 2014-08-30
  • [学会発表] HPLC-ESR法による炊飯米水溶性成分のO2-・消去活性評価2014

    • 著者名/発表者名
      山口 智子, 服部 玄, 金折 賢二, 田嶋 邦彦, 舘本 勲武
    • 学会等名
      第18回ESRフォーラム
    • 発表場所
      名古屋大学シンポジオン会議室
    • 年月日
      2014-07-26

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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