研究課題
本研究では青果物の水溶性成分に含まれる活性酸素種(ROS)の消去活性物質の探索と活性評価を、迅速かつ系統的に実施することを念頭に置いて、流通型ESR測定装置(FI-ESR)の開発、計測・解析方法の確立、基礎研究及び青果物を対象とする応用研究を展開した。まず、装置開発ではスーパーオキシドラジカル(SOR)およびアルコキシルラジカル(RO・)を測定対象とするFI-ESR装置の開発およびHPLC分析装置と融合した(HPLC-ESR)装置の開発を進めた。FI-ESR法で被検試料のSOR消去活性を評価するには、被検物質の濃度(モル濃度あるいは重量濃度)を連続的に変えた約10点の試料をFI-ESR測定に供する煩雑な手順が必要である。本研究期間内にFI-ESR装置の構成を再検討し、1試料につき2回測定することで、その抗酸化活性を基準物質の濃度として数値化できる評価法を確立した。さらに、HPLC-ESR測定法では混合系試料に含まれる様々な成分をカラム分離し、その溶出液が有する抗酸化活性をFI-ESR法と同様に基準物質の濃度として換算する計測・解析法を新規に開発した。次に、RO・を測定対象とするFI-ESR装置を新規に開発し、研究期間内に既知物質とRO・の反応を速度論的に研究し、本法を青果物の抗酸化活性評価に応用するために必須の基礎的な知見を蓄積した。これまでに、RO・を測定対象とする蛍光分析法による抗酸化活性評価(ORAC)法が広く普及していたが、今日ではその信頼性が疑問視されている。ORAC法の問題点は主に蛍光分析法の精度に起因していたので、本研究では分析法にFI-ESR法を採用した。研究期間内に、新規FI-ESR装置の測定および解析法を最適化を完了し、ORAC法を上回る新規RO・消去活性評価法を確立できたことが、本研究の重要な成果であり、将来的に標準分析法となることが期待できる。
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