研究課題/領域番号 |
26450159
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松原 主典 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90254565)
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研究分担者 |
味八木 茂 広島大学, 大学病院, 講師 (10392490)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食品機能成分 / 老齢疾患 / 脳 / 膝関節 / カルノシン酸 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、血管新生抑制作用とオートファジー活性化作用を持つ食品機能成分であるカルノシン酸について、抗老化作用の詳細な作用機構について検討を進めた。細胞を用いた実験の結果、カルノシン酸の新規作用機構として長寿に関連する転写因子FoxO3aの脱リン酸化促進作用、つまりFoxO3a活性化作用を見出した。そこで、カルノシン酸を経口摂取した場合にも、体内で同様の効果が得られるかどうか検討した。早期老化を示す老化促進マウスにカルノシン酸を経口投与し、回収した肝臓及び腎臓での解析を進めた。肝臓について免疫染色とウエスタンブロットでの解析の結果、カルノシン酸を摂取した老化促進マウスではFoxO3aの脱リン酸化が促進していた。また、FoxO3aは脱リン酸化により転写因子として機能することから、実際にFoxO3aが肝臓で転写因子として働いているかどうかについて、FoxO3aによる制御を受ける遺伝子の発現量変化をqRT-PCR法で検討した。その結果、FoxO3aの活性化によって発現が上昇するSOD2の発現量が有意に増加した。また、Mt2の発現量も高まっていた。一方、細胞レベルで確認されている、カルノシン酸によって活性化されるNrf-2系の遺伝子発現及びそのタンパク質量を検討したところ、その発現量があまり増加していないことが分かった。また、腎臓についても検討を行った結果、臓器によるカルノシン酸に対する応答性の違いはあるものの、肝臓と同様な結果が得られた。つまり、カルノシン酸の経口摂取ではNrf-2系はあまり活性化されず、FoxO3a系が抗老化に大きな役割を果たすことを見出した。この成果はカルノシン酸の新たな抗老化作用機構として興味深いものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルノシン酸の抗老化作用や加齢に伴う臓器の機能低下に対する保護効果の分子レベルでの作用機構として、転写因子FoxO3aの活性化をvitroに加えvivoでも明らかにすることができた。FoxO3aの活性化はオートファジー誘導にも関与していることから、この作用機構が抗老化作用に重要であることを示すことができた。この成果は学術的にも興味深いだけでなく、食品機能成分の応用にも役立つと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
カルノシン酸の老齢疾患予防効果の作用機構として、FoxO3aの活性化が重要であることを明らかにすることができた。今後は、FoxO3aへの作用を中心に、カルノシン酸の抗老化作用機構について更に詳細に解析する。また、FoxO3aは運動器(膝関節)の保護にも重要であることが示されていることから、膝関節組織への効果について検討を進める予定である。更に、カルノシン酸類似体や他の食品機能成分についても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度内に計画していた研究打ち合わせのための海外出張ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の海外出張費の一部として使用する予定である。
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