研究課題/領域番号 |
26450160
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小原 敬士 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10284390)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食品機能 / 抗酸化 / 一重項酸素 / 近赤外光 / 時間分解計測 |
研究実績の概要 |
1. 本課題の経費でマルチチャンネルスケーラ/アベレージャを購入し、近赤外発光寿命計測装置に組み込んだ。装置制御・データ集積プログラムを自作し、一重項酸素発光のマルチチャンネルゲーテッド光子計数計測を可能とした。一重項酸素消光速度定数が既知の標準抗酸化剤を用いて、計測条件の最適化とデータ評価を行った結果、従来の単一光子計数法では励起光パルス15 kHzで10 分以上の積算時間が必要だったのに対して、マルチチャンネルゲーテッド光子計数法では、光励起後に様々な遅延時間で離散的に放出される複数の光子を並列に捉えることで、1.2 kHzで30-60 秒の短時間の積算で解析可能なクオリティの時間変化曲線を得ることができた。さらに、一重項酸素発光が極微弱で短寿命となる水溶液やゲル中においても1-2分の計測時間で十分なクオリティの減衰曲線が得られ、決定した消去速度定数も従来法のものと一致した。励起光パルスの周波数が1/10, 積算時間が1/10以下となったことで、試料溶液に与える光ダメージを大きく低減できるメリットもある。 2.ファイバープローブ検出系を発光寿命装置に接続して、マイクロスポット計測の基礎検討を行った。マルチチャンネル光子計数法による短時間測定実現の結果、励起光をファイバーで 1 mm 以内のスポットに絞り込んだ状態でも、溶液(液滴)やゲルにダメージを与えることなく一重項酸素消光速度定数を決定できることを実証した。 3. 次年度以降の研究計画の予備検討として、近赤外近傍に吸収を持つ高効率光増感剤の合成と評価を行った。化学的安定性が若干劣ることを除けば、有機溶媒に対する高い溶解度を有し、高い吸光係数をもつことから、従来の増感剤の1/10の濃度でも計測に応用できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請の経費で購入した機器により、当初計画のマルチチャンネル光子計数による一重項酸素発光の時間変化計測の高速化が達成できた。この手法の評価を終了しており、有機溶媒系の他、水溶液やゲル中の抗酸化過程の計測が可能なことを実証できた。また、マイクロフロー計測システムについても準備が終了しており、次年度以降の研究を速やかに進行できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、マイクロスポット計測による食品・飲料の一重項酸素消去に関する研究を中心に課題を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要時に適宜購入する必要がある試薬・溶媒・冷媒(液体窒素)等の消耗物品の経費によるもので、計画との差額は当初の想定内である。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬・溶媒・冷媒・器具等の物品を購入する費用として使用する。
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