研究課題/領域番号 |
26450160
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小原 敬士 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (10284390)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食品機能 / 抗酸化 / 一重項酸素 / 近赤外光 / 時間分解計測 / 微量試料 / スポット / キャピラリー |
研究実績の概要 |
近赤外分光と時間分解計測を基盤として、食品・飲料・工業製品など広範囲なターゲットに適用できる高精度かつ高速の抗酸化活性評価手法の開発を遂行している。 1. 2015年度に着手した近赤外近傍に吸収・蛍光を持つ高感度フリーラジカルプローブの合成を試みた。設計した合成ルートが単純であるにもかかわらず、かなり難航し、数種類の化学構造が異なるプローブについて多数の合成ルートを試みた結果、2016年度末にようやく目標物質の一つを 11 mg合成・単離することに成功した。合成物質は、吸収極大 514 nm の無蛍光物質で、置換基を化学的に攻撃すると 524 nm に蛍光を発する物質に変換することから、設計通りの分子性能が実現できている。 2. 極微量試料の近赤外発光寿命計測技術について検討した。マイクロ流路計測の条件最適化を行ったが、十分な成果が得られなかった。油滴計測では油滴形状や溶媒の蒸散の制御が難しい。そこで、内径1 mm のキャピラリーに試料溶液を注入してファイバー計測を試みた。その結果、20μLの試料で解析可能な発光の時間変化曲線が安定して得られ、モデル抗酸化剤の一重項酸素消去速度定数を精確に決定することができた。キャピラリー試料の計測位置を移動させることで流通法と同等の効果も得られた。 3. 2015年度までの成果である「シコニン・ヒドロキシナフトキノン類の一重項酸素消去活性と励起状態分子内水素移動」について、日本化学会中国四国支部大会において発表を行った。 4. 2014年度までの成果である「近赤外発光スポット検出によるゲル中での一重項酸素消去活性計測」について、日本化学会コロイド・界面化学ディビジョンNewsletter「Colloid & Interface Communication」に依頼原稿を執筆した(編集中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度から着手し継続中の近赤外フリーラジカルプローブの合成については、かなり難航したが、2016年度末に少量ではあるが第一目的物質の単離にようやくたどり着いた。2017年度に評価可能な量の合成と新規長波長シフトタイプの合成を計画できる段階である。 近赤外時間分解計測については、キャピラリー計測技術が確立できたので、本課題の当初計画の目標は達成できた。 以上のことから、本課題はほぼ当初計画に沿って進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度も引き続き近赤外フリーラジカルプローブの開発に注力し、物性評価の段階にたどり着くことを目標とする。また、確立した微量高パフォーマンス計測法を用いて、生体関連試料や植物抽出物の評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度残額も含めて、当初予定通り、主に化学合成・測定に使用する試薬・溶媒・冷媒等の消耗物品の経費に使用した。実験の進捗状況や価格の変動などが原因の消耗品経費の想定範囲内の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、化学合成・測定に使用する試薬・溶媒、機器冷却用冷媒、ガラス器具等の消耗物品の経費として使用する。
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