本研究は筋肉・脂肪細胞を用いて抗サルコペニア肥満の検討を行う培養細胞評価系を構築し、その評価系を用い、候補の機能性食品群より抗サルコペニア肥満効果の探索を行い、その機能性食品成分の単離・同定、加えて活性成分の作用点を明確にすることを目的としている。平成27年度は前年度に構築した、培養筋肉細胞を用いた抗サルコペニア効果を検討するための培養細胞評価系を用いて、抗サルコペニア効果を有する機能性食品候補の探索を引き続き行った。今年度は主にマウス由来C2C12細胞を分化させた筋管細胞による筋肉分化後用の抗サルコペニア培養細胞評価系を用いて検討を行った。筋肉機能評価の一つである細胞呼吸活性の評価はWST-1 Assayにより行った。また細胞内のミトコンドリアの活性及び総量はMitoTracker Red及びMitoTracker Green染色により評価した。エネルギー代謝ホメオスタシスの主要な調節因子であるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化状態、筋肉タンパク質の量、さらにインスリンシグナル経路(Akt-mTOR経路)に及ぼす影響をWestern blottingにより評価した。なお、抗サルコペニア状態の誘導は炎症性サイトカインであるTNF-α処理により行った。その結果、検討した食品サンプルに、評価系で用いているC2C12細胞の細胞呼吸活性を上昇させる効果と細胞内のミトコンドリア膜電位を上昇させる効果が確認され、ミトコンドリア活性化作用を有することが強く示唆された。またWestern blottingの結果から、AMPKを活性化する効果を有することが確認された。さらに、TNF-α処理により誘導されたC2C12筋管細胞のタンパク質分解及びTNF-α処理によるインスリンシグナル阻害を解除する効果を有することが確認された。
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