スギ花粉症患者末梢血B細胞から樹立したヒト-マウスハイブリドーマから,スギ花粉抽出液およびトマト抽出液に結合するIgMクラス抗体を分泌する3株(14-404-117,15-38-4-3,および15-85-7-13)を選別し,詳しく特異性を調べたところ,いずれの抗体もスギ花粉アレルゲンタンパク質Cry j2に結合した。 Cry j2のアミノ酸配列をもとに,固相法で20アミノ酸長で10アミノ酸ずつシフトしたペプチドを合成し,3種類の抗体が結合する配列を検索した。15-38-4-3および15-85-7-13抗体はいずれのペプチドにも反応しなかったことから,一次構造上に抗体結合部位を持たないと推定した。14-404-117抗体はCry j2のアミノ酸配列101~140の範囲に結合した。そこで10アミノ酸長2アミノ酸シフトのペプチドを合成し,結合する配列を決定した。決定した配列をもとにさらに短い8アミノ酸長,6アミノ酸長,4アミノ酸長ペプチドを合成したところ,HFTFKVDGの配列中から合成した4アミノ酸長のいくつかのペプチドに結合した。 HFTFKVDG配列のアミノ酸を1残基,あるいは連続する2残基ずつアラニンに置換(アラニンスキャン)したペプチドを合成して14-404-117抗体の結合を調べたところ,FKVDのいずれかがアラニンに置換された時に抗体の結合性が著しく低下することを認めた。このことから,14-404-117抗体が認識するCry j2の中心的抗体結合部位(コアエピトープ)はFKVD配列であると結論した。 杉花粉症患者の一部はトマトによる口腔アレルギー症候群(OAS)を発症する。そこで,トマトタンパク質に14-404-117抗体が結合するコアエピトープが存在するかを検索したところ,アスコルビン酸酸化酵素,セリン/スレオニンプロテインキナーゼに同じ配列が存在した。
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