今までの研究でワサビの辛味成分である6-MSITCはPEPCK mRNAの発現を抑制することを認めている。そこで本研究は、6-MSITC によるPEPCK mRNAの発現抑制のシグナル伝達経路の検討を行った。 ラット高分化型肝癌細胞株である H4IIE細胞を各種シグナル分子の阻害剤で処理し、6-MSITC で処理した後、リアルタイムPCR法を用いてPEPCK mRNA の発現量を測定した。その結果、novel PKC の選択的阻害剤であるrottlerin、MAPK Kinase の阻害剤である PD98059 および U0126処理によって、PEPCK mRNAの発現抑制が有意に阻害された。これらの結果より、6-MSITC による PEPCK mRNA の発現抑制は、novel PKC、および MAP Kinase経路 を介すことが示された。さらに、ウェスタンブロット解析を行った結果、活性化型であるリン酸化 MAPK Kinase 量は、6-MSITC 処理後10分で増加することが示され、これによりPEPCK mRNA の発現抑制に、MAP Kinase経路が関与することが明らかとなった。 さらに6-MSITC によるPEPCK 遺伝子の転写調節機構について検討を行った。H4IIE 細胞にprPEPCK / Luc ( -467+69 ) をトランスフェクションした後、dexamethasone 存在下の生理的条件のもと6-MSITC 存在下・非存在下で培養した。Dual- Luciferase assay system にてルシフェラーゼ活性を測定した結果、6-MSITC はPEPCK 遺伝子のプロモーター活性を有意に低下させた。以上より、6-MSITC によるPEPCK mRNA の発現抑制は、転写レベルで生じることが明らかになった。
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