研究課題
母体の高脂肪食摂取など慢性的なカロリー過多や飢餓などの栄養の偏りは、次世代の生活習慣病発症のリスク因子になることが懸念されている。フルクトースは「果糖ブドウ糖液糖」の名で添加甘味料として多くの清涼飲料水や加工食品に広く利用されており、過剰摂取は摂取した個体への脂肪肝、更には非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症などの影響が確認されている。フルクトースに関しては、母胎の胎盤を介して脳においてもミトコンドリアのエネルギー代謝異常を誘発するなど、母体を介したフルクトースに対する脆弱性が確認されている。しかしながら、その分子メカニズムは不明であり、我々はこれらのメカニズム解明に向けて研究を行った。まず記憶中枢でありながら外的刺激に脆弱である海馬に注目した。20%フルクトース水を摂取させた母ラットより生まれた仔の海馬を解析したところ、ミトコンドリア酸素消費量の有意な低下と、過酸化脂質の有意な増加が認められた。またUncoupling protein 5 (UCP5) mRNA発現量が有意に低下し、UCP5遺伝子の転写開始点上流のDNAメチル化率が有意に高値を示した。さらに我々は細胞実験により、ラットUCP5遺伝子は転写開始点上流にプロモーターが存在しDNAメチル化によって転写制御されること、UCP5遺伝子をKnockdownすると酸化ストレスが誘発されることを確認した。本研究において、母獣の妊娠・授乳期におけるフルクトース過剰摂取は、仔海馬において、UCP5遺伝子プロモーターのDNAメチル化を介して同遺伝子のmRNA発現量を低下させ、酸素消費量低下や酸化ストレス亢進を招くことを示唆した。
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Endocrine Research
巻: 42 ページ: 71-77
doi: 10.1080/07435800.2016.1182186. Epub 2016 Jun 3.