研究課題/領域番号 |
26450172
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
秦 勝志 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (10392375)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カルパイン / 胃粘膜防御機構 |
研究実績の概要 |
消化管の防御システムは複雑かつ多様であり、その分子機序には未解明の点が多い。我々は、胃腸特異的に発現する細胞内プロテアーゼであるG-カルパイン(カルパイン8とカルパイン9のヘテロ二量体)の生理機能として、ストレスに対して作動する胃粘膜防御への関与と、ヘルパーT細胞の一種であるTh17細胞の分化制御を通じた腸管免疫への関与を見出してきた。本研究はその分子機序の解明を大きな目標としている。 本年度は、G-カルパインによる胃粘膜防御機構の検討を中心に以下2つの研究を進めた。一つ目は、カルパイン8と9がヘテロ二量体を形成する意義として、カルパイン8がプロテアーゼ活性サブユニット、カルパイン9がヘテロ二量体を安定化させるシャペロンとして機能することを明らかにした (Hata et al. JBC, 2016)。二つ目はG-カルパイン活性欠損マウス胃粘膜組織のマイクロアレイ解析を行うと共に、ヒトCAPN8及びCAPN9各遺伝子で見出されている一塩基多型(SNP)に着目し、これがG-カルパインの活性に及ぼす可能性について検討した。その結果、マイクロアレイ解析により、G-カルパイン活性欠損マウス胃における細胞接着や移動の制御因子の発現上昇と、胃酸分泌の制御因子の発現低下を見出した。また、一部SNPによってG-カルパインの活性が減弱または消失することを明らかにした。これらの結果から、G-カルパインが細胞の増殖・移動だけでなく、胃酸分泌の制御などにも関わること、そしてCAPN8とCAPN9のSNPに伴うプロテアーゼ機能の損失が、ストレス性胃疾患の発症リスクを反映することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、G-カルパインの活性はカルパイン8のみが担うこと、すなわち見かけは2種類のプロテアーゼの複合体だが実際は1種類の活性を示すプロテアーゼであることが示されたことは、今後G-カルパインの標的を探索する上で重要な知見であった。また、G-カルパインによる胃粘膜防御に、細胞増殖・移動が関わることが培養細胞レベルの解析で今までに示唆されていたが、本年度行ったマイクロアレイ解析によって、これを裏付ける結果が得られたこと、加えて胃酸分泌制御に関わる分子の発現変動も示され、新たな胃粘膜防御機構の存在が示唆された。 腸管免疫に関する解析は進められなかったが、胃粘膜防御についての解析は予期しない結果を含め一定の進捗が見られたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイ解析で同定された分子の発現変動をPCRやタンパク質レベルでも再現するか確認すると共に、再現性が確認できた分子の機能制御へのG-カルパイン関与について調べていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行のためにマウスを用いた解析を進めてきたが、マウスの繁殖が計画通りに進まなかったため、研究計画の遂行に若干の遅延が生じ、当該未使用額が発生した。しかし、最近になりマウスの繁殖が進み研究を進める目処がついたため、補助事業期間を延長し、当助成金での研究を継続する。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスの維持・購入費用、マウス解析のための消耗品の購入に使用する。
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備考 |
所属研究室ホームページ http://www.igakuken.or.jp/calpain/
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