研究課題/領域番号 |
26450175
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
奥田 徹 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10252008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | pK / ワイン / 吸着 / ポリフェノール / アントシアニン |
研究実績の概要 |
Muscat Bailey Aから製造した赤ワインは、タンニンが少ないため、タンニンが果皮等に吸着すると考えた。そこで果皮から抽出したマトリクス成分(主として不溶性の多糖類と考えられる)に対するポリフェノールの吸着活性をモデル系において調べた。ワイン中の条件を考え、モデルワイン(12%エタノール、5g/L酒石酸)中での実験を行ったところ、アントシアニンはアルコール濃度が高いほど、吸着力は減少した。このことからMuscat Bailey Aでみられる発酵中のタンニン濃度の減少は、アルコール濃度の増加による親水力の変化にはよらないと予想された。また、アントシアニンでは疎水性の高い化合物の方が吸着力が強いようであった。果皮タンニンの場合は、pHを変化させた条件では吸着力が変化し、pH4.2では70%が、pH3.2では30%が吸着し、pKaが存在する可能性が示唆された。本実験の追試実験を行ったが、再現性が得られた。 以上の結果から、マトリクスへの吸着はおこり、pHの影響を受けることが明らかになった。ワイン製造時のpHについては、微生物学的な観点から、また、アントシアニンの発色の観点から、低pHが望ましいと考えられてきたが、マトリクスとポリフェノールの吸着活性に最適pHが存在することから、ブドウの熟度によりpHが変化することで、ワインのポリフェノール濃度が変化することが示唆された。現在、吸着最適pHで吸着されたポリフェノールが、pH変化により乖離するかを確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験自体は順調に推移しているが、得られた結果は想定をはるかに超えた面白い結果となった。当初の予定では、アルコールあるいはpHによる単純な結合を考えていたが、タンニンでは最適吸着pHが存在することから、反応が複雑で、様々な要因を考える必要に迫られている。
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今後の研究の推進方策 |
実学的な観点では、ポリフェノール吸着をモデル系ではなく、実際のマストで実験する必要がある。マストのpHを変えることで、ワインのポリフェノール濃度が変化することを確認する。一方、吸着機構については、平成27年国際学会で、本研究に興味を持っているUC DavisのAdams教授やワシントン州立大のHerbertson准教授、オレゴン州立大Kennedy教授らとの話から、ヒントを得たいと思っている(平成28年6月の学会でディスカッション予定)。その他の実験計画は、当初のまま遂行する予定である。
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