高静水圧(加圧)処理は、非加熱殺菌が可能なため熱に敏感な成分の保持が可能であるだけでなく、加圧処理により作製されたタンパク質ゲルは加熱処理により作製されたゲルとは異なる物性を有しており、新規食品の製造が期待される。本申請では、様々な処理条件において作製される加圧ゲルの品質について調査し、その体系化を図ることを目的としている。平成28年度は、添加物の化学的性質が加圧ゲルの品質に及ぼす影響について詳細な基礎的データを収集し、その基礎的データを用いた統計解析により、組成や処理条件とゲルの品質との体系化を図ることを目的とした。 今回検討を行った香気成分においては、そのほとんどで加圧ゲルのかたさを増加させる傾向が見られた。しかしオクタンにおいては、かたさがほとんど増加しなかった。今回用いた33種類の香気成分のうちオクタンだけが親水基を持たないことから、親水基の有無がかたさの増加に影響すると示唆された。また、ヘキサナール、オクタナール、α-イオノン、β-イオノンにおいてかたさの増加が大きかったことから、アルデヒド基および六員環構造を持つ香気成分においてかたさの増加の程度が大きくなると示唆された。1-ヘキサノール、3-ヘキサノン、ヘキサン酸など炭素鎖が短い香気成分ほど、かたさの増加の程度が小さいという傾向があり、官能基だけでなく炭素鎖の影響も受けるということが考えられた。 かたさの増加と香気成分の化学特性とを比較したとき、logP、分子量、炭素数において高い決定係数を示した。これらの化学特性が相関を示した理由として、加圧ゲルの変性に疎水性、親水性が関係していること、分子量や炭素数が炭素鎖に関係した値であることが考えられた。このことから、添加する香気成分の化学特性によって、かたさの増加の推定が可能となることが示唆された。
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