PCR技術は、様々な研究分野から検査業務に至るまで、幅広く利用されている。定性的なPCR分析においては、僅か1分子のDNAをも検出可能であると考えられているが、その一方で、PCRによるDNA定量分析の技術的限界に関しては、これまで全く検証されてこなかった。これは、そのような検証が可能な、ごく少数のDNA分子を含む標準試料が存在していないことが原因である。本研究では、そのような一桁台を含むごく少数の規定数N個のDNA分子を含む標準試料DNAを開発し、さらに、既存のDNA定量技術の限界を検証する。具体的には、標的配列をN個含む標準DNA-Nを作製するために、PCR標的配列をN個直列につなぎ、さらに、それらの標的配列の間に制限酵素の認識配列を配置した状態でプラスミドDNAに導入する。この標準DNA-Nを含む限界希釈溶液(試料溶液中に標準DNAが1個ないしは0個しか入っていない状態)を分析する直前に制限酵素処理することにより、分子数が任意のN個からなる標準DNAの調製が可能となる。 今年度は、ごく少数分子のDNA定量の可否が検証可能な標準DNAの構築を行った。本研究では、遺伝子組換え(GM)検知での適用を主要目的としていることから、GM検知に用いられているDNA配列を中心に設計した。昨年度までの検討から、単純に同じ配列を繰り返すと、何らかの立体障害等が発生するのか標準DNAの構築がうまくいかなくなったことから、繰り返し配列の周辺に無関係なジャンクション配列を導入させた。ジャンクション配列には、A、T、G、Cのバランスの取れたランダム配列を採用した。これにより、Le1配列が16個導入された標準DNAの構築に成功した。
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