天然林施業を組み入れた地域の森林管理オプションを提示する目的にむけて、平成27年度においても、天然生林が優占する北海道北部のモデル地域(北海道大学研究林を中心)を対象に引き続き野外調査・データ解析を進めた。各種の天然更新補助作業を対象とした研究では、複数の対象樹種それぞれの定着に及ぼす作業の成否の条件を、とくに土壌および周囲の植生に注目してまとめた。ミズナラに関してはAsadaら(2017)として公表し、カンバ類に関する成果は国際誌へ投稿中である。一方、天然生林の択伐施業において、持続的な生産の大きな課題のひとつである残存木の枯死率の増加について、トドマツを対象とした研究成果を国際学会で発表し、投稿中である。これらを受けた補助期間全体の成果として、北海道の天然生林を対象に、複数の施業オプションを考慮した森林動態シミュレーションを実施した。択伐施業下で、森林の蓄積・構造を長期にわたって維持する要件として、伐採率10%、回帰年20年、小径木を伐採しないこと、残存木の枯死率増加を抑えることが挙げられたが、そこに、更新個体の成長を促す方策(表土を戻す地拵え、早期の除伐)を考慮した天然更新補助作業を組み込むことによって、経済的な持続可能性も達成しうる可能性が示唆された。この内容について第128回日本森林学会大会で発表するとともに、国際誌への投稿を準備中である(その後、普及誌において地域の森林管理オプションを提示する紹介記事を執筆する)。また、天然生林択伐施業地における、木材利用と他の生態系機能に関する論考について、同様に国際誌への投稿を準備中である。
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