研究課題/領域番号 |
26450193
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 麻美 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60273497)
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研究分担者 |
稲垣 善之 国立研究開発法人森林総合研究所, 四国支所, 主任研究員 (00353590)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 樹冠葉量 / パイプモデル / ヒノキ / 葉寿命 / 生枝下断面積 / 生枝下高 / 窒素利用 / 間伐 |
研究実績の概要 |
樹冠葉量は森林生態系の物質生産や物質循環において重要な特性である。樹冠葉量は生枝下断面積と高い相関関係を示すことが知られている。生枝下断面積を樹高、生枝下高および胸高断面積から推定する手法が提案された。これらを組み合わせることで樹冠葉量を推定できるか、この有効性を明らかにするとともに常緑性のヒノキの樹冠葉量を推定し、葉寿命および窒素利用特性を明らかにすることが本研究の目的である。 7地域のヒノキ壮齢林における伐倒調査の個体データを用いて、生枝下直径から算出した生枝下断面積と、樹高、生枝下高および胸高断面積から推定した値はほぼ1:1の関係を示し、生枝下断面積は共通の式で推定できることを明らかにした。樹冠葉量と推定した生枝下断面積とは比例関係にあり、パイプモデルが成り立つことを示した。生枝下断面積と樹冠葉量との関係における比例定数は地域で異なり、年平均気温と正の相関関係が認められたことから年平均気温から樹冠葉量を推定できることを示した。 茨城、京都、高知の21林分において樹冠葉量と落葉量を測定し、これらから葉寿命を推定した。樹冠葉量は気温や土壌条件に関わらず一定の値を示した。葉寿命は気温との関係は認められなかったが、土壌窒素が乏しい条件では葉の生産量を少なくして葉寿命を長くしている傾向が認められた。また、気温が高いほど生枝下断面積と樹冠長率が低い傾向が認められたことから、気温によって枯れ上がりの程度が異なり、樹形が変化することが示唆された。 異なる間伐率のヒノキ人工林における間伐から10年間の葉量回復において、回復期間は強度に間伐した林分および枯れ上がりが大きい林分で長いことを明らかにした。 本研究では、パイプモデルに基づく手法を用いて簡易にヒノキの樹冠葉量を推定できることを明らかにした。さらに、常緑性であるヒノキの葉寿命を推定し、間伐後の樹冠回復に影響を及ぼす要因を明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹高、生枝下高および胸高断面積から生枝下断面積を推定し、パイプモデルに基いて樹冠葉量を推定する手法がヒノキ林分で有効であることを明らかにした。得られたモデル式により推定した樹冠葉量を用いて、ヒノキの葉寿命および窒素利用の特性、さらに間伐後の葉量回復について明らかにした。当初の目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
スギについてもパイプモデルに基いて樹冠葉量を推定できるかを検証する。林齢による影響についての検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
得られた結果について成果発表を行うために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表にかかる経費に使用する。
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