研究課題/領域番号 |
26450201
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
亀山 統一 琉球大学, 農学部, 助教 (30264477)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マングローブ / 樹木内生菌 / 樹木病害 / 琉球列島 / 環境ストレス / 樹形 |
研究実績の概要 |
沖縄島大浦湾(大浦川・汀間川)、中城湾、西表島浦内川に固定調査地を設定した。メヒルギおよびヒルギダマシについて、調査地内に定めた調査木の樹冠の高さの違いに応じて茎葉の生長や健全度の調査を経時的に実施できる体制を整えてデータの収集を開始した。各調査地の直近のAMeDASポイントのデータと調査地の実際の気象状況について比較検討し、局地的一時的な豪雨(スコール)は反映しないが、気温や降雨全般の傾向は利用できるものと判断した。西表島の調査地については年度内に毎木調査を実施した。その結果に基づき、沖縄島の一調査区で比較のための毎木調査を2015年度に行う準備を整えた。バックマングローブのうち検討の対象とする樹種の絞り込みを行った。病原性試験に必要なメヒルギの胎生芽を、成熟期である2015年3月下旬に収集して、苗の育成を開始した。メヒルギの当年生茎葉、胎生芽、散布体からの菌類の分離試験を開始した。これまでメヒルギの散布体組織においては、樹木内生菌の分離頻度が成木茎葉よりも著しく低いこと、及び、成木の茎葉において優占的に分離される内生菌群や枝枯病病原がほとんど分離されないことが報告されているが、今回、成熟途上の散布体では内生菌分離頻度は確かに低いが、成木で優占的であるような菌群も分離されることを確認した。一方、枝枯病病原は散布体からは分離されないが、樹冠の高頻度冠水域にある枯死枝においてその標徴を高頻度に確認し、枝枯病は、散布体よりも折損した枯死枝に乗って病原体が長距離伝播されうることを見いだした。種子や散布体組織の寄生菌類については、ヤエヤマヒルギ及びオヒルギでも検討した。分離された、分離菌株の菌糸体からのDNAの抽出・精製、およびPCR産物の安定的な調製の方法について最適条件を見いだすべく検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査区の設置、毎木調査の実施、バックマングローブのスクリーニング、メヒルギの寄生菌類の調査開始、菌類DNAの抽出、精製、増幅については、2014年度に設定された研究実施計画を達成した。メヒルギと同時に、オヒルギ、ヤエヤマヒルギにおいても成熟途上の散布体の菌類相の比較検討を始めた点は当初の計画になかった進展である。したがって、本研究は極めて順調に進んでいる。以上のような準備をおえて、メヒルギ、ヒルギダマシ、バックマングローブについて、冠水条件、分離される寄生菌類相、茎葉の成長や健全度の三者の比較検討を行うことが本研究の眼目である。しかし、研究1年度目の2014年度には、この比較検討を開始するにいたらなかった。このことから、「やや遅れている」との自己評価を行った。菌類相の比較に着手しなかった理由は、調査地とした西表島及び沖縄島二ヵ所について、西表島では2014年の梅雨期から11月まで、沖縄復帰後類例を見ない小雨に見舞われて、旱魃による林木の落葉被害が生じたこと、また、沖縄島2ヵ所では、2014年の2回の台風の襲来によって、海岸域に著しい潮風害・枝の折損被害が生じ、ヒルギダマシとバックマングローブは、使用可能な茎葉が失われたことにある。両島とも稀な気象害を受け、樹木内生菌や病原菌の茎葉への効果よりもはるかに強度の傷害が発生してしまったため、年度内に意味あるデータが取れないこととなった。その結果、学会報告等もできなかった。しかし、研究期間内にこのような気象影響が起こることは出願時に想定した範囲内である。2015年度に上記実験を実施することにより研究期間内に所期の目的を達成することができ、実際に2015年度に実施を計画しており、14年度の準備を受けて15年度は台風シーズン前にも着手できるので、研究計画全体としては、当初目標を達成可能であり、問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画に沿って推進して差し支えないと考える。調査木の健全度等の調査および毎木調査については、継続的に実施する。メヒルギに、ヒルギダマシ、バックマングローブも加えて、冠水条件、分離される寄生菌類相、茎葉の成長や健全度の三者の比較検討を行うことが本研究の中心課題であるので、2015年度に適時にそのサンプリングを行い、確実に菌類の分離試験を行い、分離菌株を確保する。メヒルギ、ヒルギダマシは幼若な茎葉の食害被害が頻発するので、2015年初夏から秋にかけて数回の調査を行い最も条件がよいときの試料を用いることとするなど、万全の体制をとる。枝枯病など病原菌類の作用については、患部の組織解剖、分離菌株の接種試験に着手する。2014年度にヒルギ科3樹種の散布体について検討できたので、オヒルギおよびヤエヤマヒルギの散布体についても、本研究の対象として活かせないか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度中に研究上必須の機材であるクリンベンチに修理の必要が生じ、部品・作業代として「その他」の支出を相当額することとなった。そのため、学生アルバイトによる研究補助を削減し、旅費、物品費も当初予定を修正しながら適正執行に努めたところ、結果的に953円という少額が残ったので、次年度の配分額とあわせて執行するのが合理的と判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
全額を2015年度の配分額とあわせて物品費・旅費として執行したい。
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