研究課題/領域番号 |
26450202
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
長島 啓子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40582987)
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研究分担者 |
田中 和博 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70155117)
高柳 敦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70216795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シカの食害 / ナラ枯れ被害林分 / 小面積皆伐 / 植生回復 / 防鹿柵 |
研究実績の概要 |
昨年度,ナラ枯れ被害林分の植生回復パターンと要因の関係を十分説明ができる結果が得られなかったため,昨年度得られた京都三山60地点における植生調査データを用いて,植生パターンを立地環境ベースで,上層と下層に分けて再解析を行った。その結果,ナラ枯れ被害林分の植生は,上層がアベマキ・コナラ林の場合は,下層にコバノミツバツツジ・ネジキ林,ヤブツバキ林,サカキ林,アラカシ林が,コナラ林では,下層にコバノミツバツツジ・ネジキ林,ヤブツバキ林,モチツツジ林,アラカシ林が,コナラ・ソヨゴ林の場合は,コバノミツバツツジ・ヒサカキ林,コバノミツバツツジ・ネジキ林,モチツツジ林が形成され,合計11パターンに分類できた。また数量化II類を用いて下層の植生群が形成される要因を解析した結果,地質,上層植生,傾斜,および表層土粒径によって形成される下層植生が異なることが判明した。一方,シカの食害の程度と植生との関係は現段階では明確ではなかった。 防鹿柵設置による植生回復効果の把握では,H27年11-12月にかけて,宝ヶ池公園のナラ枯れ被害林分に,(a)ナラ枯れ木のみ伐採した後,防鹿柵のみを設置する「防鹿柵区」,(b)小面積皆伐を実施した後,防鹿柵を設置した「伐採+防鹿柵区」,(c)ナラ枯れ木のみ伐採した「コントロール区」をそれぞれ10m×30mで設置し,来年度のモニタリングに向けた準備を完了した。 シカによる利用状況把握は,宝ヶ池公園へのシカの外部からの移動経路と被害状況の把握に努めた。高野川から長代川が主な移動経路となり、川から上がる人間用の階段が使われているため侵入を止めるのは極めて困難であるとわかった。短期間に下層植生が壊滅的な影響を受けるような被害は発生していないが、被害の拡大が続いていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナラ枯れ被害林分の分布状況の把握では,衰弱木の抽出が可能な適切な衛星画像がない中でも,枯死木抽出により研究対象地である京都三山の落葉広葉樹林のナラ枯れ被害状況をH26年度に既に把握できている。 植生回復パターンの把握では,ナラ枯れ被害を受けているコナラ林およびアベマキ林が現段階で下層植生によって11の植生パターンを示していることを把握した。昨年度明らかにできなかった立地環境との関係についても,82.76%という高い判別率で地質,上層植生,傾斜,および表層土粒径との関係があること分かっており,来年度予定しているポテンシャルマップ作成の基礎データが完成した。また,本内容について,H28年3月に行われた森林学会において,発表も行った。 防鹿柵設置による植生回復効果の把握では,各プロット10m×30mの「防鹿柵区」「伐採+防鹿柵区」「コントロール区」を,H27 年11月から12月にかけて,計画通り宝ヶ池公園に設置し,来年度から実施するモニタリング作業の準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
シカの食害環境下にあるナラ枯れ被害林分の植生回復パターンの把握では,現段階の植生パターンと立地環境の関係が把握できている。シカの食害の程度との関係が不明瞭なので,更に解析を実施する必要がある。しかし,来年度予定しているポテンシャルマップの作成の素地はできており,計画通りポテンシャルマップを作成し,その精度を確認する作業を実施したい。 防鹿柵設置による植生回復効果の把握では、自動撮影装置により、防鹿柵設置後のシカによる利用状況を引き続き把握するとともに、シカの影響を低減する効果的な防鹿柵設置方法についても検討する。また,H27年11-12月に設置した「防鹿柵区」「伐採+防鹿柵区」「コントロール区」の植生回復状況をモニタリングし,初期におけるこれらの措置の効果を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の高柳氏のシカの利用状況把握調査において,研究補助を依頼して実施する予定であった調査を補助なしで実施できたことにより,残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
高柳氏の来年度の配分予算は,当初は,消耗品費(6万),国内旅費(13万),謝金(3万5千),その他(3万)の合計255,000円であった。加えられる残額(102,578円)は,防鹿柵設置後のシカの利用状況把握のために,新たに設置する必要があると考えられる自動撮影装置(5万)と,そのデータ回収と解析補助に必要な謝金の不足分(5万[これにより,謝金は来年度配分予定額と合わせて8万円となる])として,利用予定である。
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