| 研究課題/領域番号 |
26450203
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| 研究機関 | 長野大学 |
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研究代表者 |
高橋 一秋 長野大学, 環境ツーリズム学部, 准教授 (10401184)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | 森林生態学 / ツキノワグマ / 林冠ギャップ / クマ棚 / クマ剥ぎ |
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| 研究実績の概要 |
ニホンツキノワグマは落葉広葉樹の果実を樹上で採食する際に林冠に「クマ棚」を形成することによって、また特定の針葉樹の樹皮を採食する際の「クマ剥ぎ」行動を通じて樹木を枯らすことによって林冠ギャップを創出する。本研究は、ツキノワグマ由来の林冠ギャップ下における光環境の特性、それに対するギャップ周辺の植物の反応を階層別に、かつ複数の生活史レベルで分析すると同時に、その植物の反応（開花・結実の促進）が花粉媒介者（昆虫）および果実食者・種子散布者（鳥類・哺乳類）の誘引に与える影響を分析することで、ツキノワグマによる林冠ギャップ形成を契機とする「生物間相互作用ネットワーク」を解明する。
「林冠ギャップの構造」研究：クマ棚モニタリングサイト（1.8ha）とクマ剥ぎモニタリングサイト（1ha）において、創出された林冠ギャップの面積・空間分布・発生密度に関するデータを収集・蓄積した。
「光環境の改善」研究：クマ棚モニタリングサイトにおいて、林冠ギャップ下および閉鎖林冠下（ミズナラ2個体ずつ・クリ1個体ずつ）の各階層（0.5m、2m、5m、10m、15m、20m〔樹冠外〕）に照度ロガーを設置し、照度のモニタリング調査を開始した。
「植物の更新・繁殖」研究：クマ棚モニタリングサイトにおいて、林冠ギャップの形成がその樹木自体の雄花生産量と堅果生産量に与える影響をミズナラ20個体・コナラ10個体・クリ10個体を対象に調査した。また、雄花生産量とその年の堅果生産量の関係を明らかにすることによって、将来的に堅果生産量予測モデルを構築し、事前にクマ棚・林冠ギャップが創出されうる林分を予測するためのモニタリング調査を開始した。一般化線形混合モデル（GLMM）とAICによるモデル選択の結果、雄花生産量が堅果生産量に有意な正の効果を与えていた樹種はクリのみであり、ミズナラとコナラについてはむしろ負の効果が認められた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「林冠ギャップの構造」研究：クマによって創出された林冠ギャップの面積・空間分布・発生密度の調査を計画通りに実施ができた。
「光環境の改善」研究：クマ棚・林冠ギャップ下の光環境を定量化するモニタリング調査を開始できたが、クマ剥ぎ・林冠ギャップについてはクマ剥ぎによる立ち枯れ木に照度ロガーを設置するのが予想より困難だったため、設置方法を検討するに留まった。
「植物の更新・繁殖」研究：クマ棚モニタリングサイトに設置された各グリッド（10m×10m）を4個の植生枠（5m×5m）に分割し、出現する木本種（実生も含む）の種数、被度（1：0-20%、2：20-40%、3：40-60%、4：60-80%、5：80-100%）および開花・結実の状況（結実率）を階層別（0-0.5m、0.5-2m、2-5m、5-10m、10m-20m、20m以上）に調査し、各グリッド内に形成された林冠ギャップの面積が与える効果を一般化線形混合モデル（GLMM）にて求める予定であったが、調査を予定していた8月の台風到来（2回）により、悪天候が続いたため、計画通りにフィールド調査を実施できなかった。
「動物（花粉媒介者・果実食者・種子散布者）の誘引」研究：自動撮影カメラ・ビデオを活用し、果実を利用する鳥類・哺乳類を撮影すると同時に、シードトラップを調査プロット内の各グリッドの中心に設置し、トラップ内に落下する自然落下果実（果肉あり）および散布種子（果肉なし）を調査することによって、種類ごとの結実量と種子散布量（種子散布効率）を評価し、鳥類の挙動と誘引効果を間接的に把握する予定であったが、8月の台風到来によりフィールド調査を開始できなかった。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施予定であった「植物の更新・繁殖」研究のうち、台風の影響で実施できなかったフィールド調査については、平成27年度にクマ棚モニタリングサイトの調査を実施し、クマ剥ぎモニタリングサイトにおける調査は平成28年度に実施することで、当初計画していた調査を残り2年間で実施する予定である。
同様に平成26年度に実施できなかった「動物（花粉媒介者・果実食者・種子散布者）の誘引」研究については、研究内容および計画を再度練り直すとともに、平成27年度からフィールド調査を開始できるように準備に取り掛かる。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
フィールド調査を予定していた平成26年8月に2回の台風到来があり、悪天候が続いたため、調査を実施できなかった。そのため、調査機材（センサーカメラ、実体顕微鏡）、登はん用具（ハーネス・登降機・カラビナ・ザイルほか）、調査用具全般（野帳・標識テープ・ビニール袋、測量杭・ナンバーテープ・ガンタッカー芯、捕虫網・三角紙・昆虫針・展翅板・標本箱ほか）、フィールド調査旅費などの支出ができなかったことが主な理由である。
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| 次年度使用額の使用計画 |
台風の影響により実施できなかった調査を平成27年度に実施することによって、平成26年度に購入する予定であった調査機材、登はん用具、調査用具全般を平成27年度に購入する。また、平成27年度の請求額については、当初の計画通り予算を執行できる見込みである。
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