研究課題/領域番号 |
26450204
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
長谷川 浩一 中部大学, 応用生物学部, 講師 (10609837)
|
研究分担者 |
河合 都妙 中部大学, 応用生物学部, 助教 (90610717)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | マツ枯れ病 / 細菌 / ゲノム / 酸化バースト / 過酸化水素水 / マツノザイセンチュウ |
研究実績の概要 |
宿主マツに感染したマツノザイセンチュウは、マツの初期防衛反応である酸化バーストに打ち勝つことで病原性を発揮できる。本研究では、マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウと宿主マツ、さらにマツノザイセンチュウと共生関係にある細菌を加えることで、3者間で繰り広げられる寄生・共生関係のバランスを「酸化ストレス応答」をとおして解析した。 線虫随伴細菌としてSerratia marcescens PWN146を選び、GFP標識をおこなったのち宿主植物細胞内への侵入有無、侵入した際の局在性について、共焦点顕微鏡を用いて調べた。植物細胞間に局在し、根毛成長促進作用があったことが今回の発見である。また、マツノザイセンチュウとともに細菌PWN146をマツ苗に接種することで、マツノザイセンチュウ単独接種したときと比較して、マツ枯れ病を促進することも示せた。 つぎに、細菌PWN146のゲノムを調べたところ、病原体侵入に対する植物の防衛反応である酸化バーストに抵抗するための、酸化ストレス抵抗性遺伝子や、薬剤耐性遺伝子等が多く存在した。Type I、II、IV、V、VI 分泌システムをはじめSec-SRP、Tat (Twin-arginine translocation)が備わっているが、植物病原性細菌に特徴的なType IIIはなかった。12か所のギャップがあり、おそらくゲノム中のリピート配列が集中しているもしくは巨大プラスミドが存在してコンティグの接続を困難にしていると思われるが、上述のように生態特性を把握するための重要遺伝子の存在が確認できた。細菌PWN146のゲノム解析により明らかとなった、酸化ストレス抵抗性遺伝子を選び、遺伝子ノックアウト株の作成をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究でメインに取り扱う細菌Serratiaのゲノム解析が順調に進められたことから、酸化ストレス応答関連遺伝子の存在を把握することができたのは大きな収穫である。また、多剤耐性でもあり組み換え体作製が非常に困難な本種であっても、その手法を確立することができた。このことにより、トランスポゾンTn5を用いた順遺伝学解析よりも、遺伝子を狙って破壊する逆遺伝学的解析が大きく進展できた。
|
今後の研究の推進方策 |
10kbリードが可能なPacBio解析を進め、細菌S. marcescens PWN146のゲノムギャップを埋めた完全配列を目指す。マツノザイセンチュウや植物との相互作用に関するデータを加え、平成27年度中には本随伴細菌のゲノム解析結果の論文を発表することができるはずである。 また、抗酸化酵素の発現制御に関わると予測される転写因子のノックアウト株が取得できたため、性質(酸化ストレス耐性能、バイオフィルム形成能、線虫表面接着能等)を調べ、抗酸化酵素遺伝子発現が無いことをRT-PCRで調べる。続けて抗酸化酵素遺伝子のノックアウト株も作成する。そしてノックアウト株の病原性促進効果が欠落したかどうかを、マツ実生苗を使った感染実験によって調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2014年9月に投稿して年度中に採択されると考えていた論文投稿代、および3月中に注文した物品があり、これらの合計が次年度使用額に相当する。
|
次年度使用額の使用計画 |
3月中に注文した物品への支払いに充てた。論文投稿代も4月に入ってから支払ができ、4月20日に掲載された。
|