研究課題
マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウがマツ樹木体内に侵入した瞬間から、線虫と宿主マツとの間で種々の攻防が繰り広げられる。植物における病原体感染時の初期防衛反応として酸化バーストが重要であり、マツノザイセンチュウに感染したマツも活性酸素種を大量に生産して防衛していることが知られていたが、酸化ストレス応答分子・解毒代謝酵素の働きが活発なマツノザイセンチュウ株ほど、植物側の防衛反応をかいくぐる能力が高く、したがって病原性が高いことが分かった。本プロジェクトと並行して進められてきた、マツ枯れ病を取り巻く環境のマイクロバイオームプロジェクトの解析結果から、解毒代謝機構が非常に発達しているマツノザイセンチュウ随伴細菌Serratia sp. LCN16を選抜した。植物内生菌(endophytic bacteria)グループに属すること、酸化ストレス酵素・解毒代謝酵素を多く備えていることがゲノム解析からわかり、植物防衛反応である酸化バーストからマツノザイセンチュウを保護する働きがあることを遺伝学的に示すことができた。最近特に、マイクロバイオームに注目した研究は様々な領域において非常に盛んであり、細菌の多様性だけにとどまらずその機能性への認識がますます高まってきている。本研究室では、世界の森林生態系に大きな影響を与え続けるマツ枯れ病を、マイクロバイオームを加えた3者間の間で繰り広げられる攻防について酸化ストレス応答から切り込んだ、森林科学としては新しい試みであったといえる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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http://www3.chubu.ac.jp/faculty/hasegawa_koichi/