森林の生物多様性の決定要因を把握することにより、より生物多様性の豊かな森林へと導く施業のための情報を得ることができる。これまで、トビムシ、ササラダニ群集の住み場所の選好性は、土壌由来の要因か地上部環境の要因かを区別できなかった。この研究では、針葉樹人工林と広葉樹林の落葉層および土壌層を土壌ブロックとして採取し、それを互いの森林間で入れ替える手法でその検討を行った。トビムシの個体数、種数は、広葉樹林で大きく変動があり、設置後1週間、1ヶ月は、ヒノキ人工林の方が多い傾向がある一方、12か月目、16ヶ月目は差が無くなる、もしくは、広葉樹林で多くなる傾向があった。土壌の効果はいずれの機会も不明瞭であった。トビムシの種組成は場所の違いの説明割合が大きく、1か月目以降では土壌の説明割合は有意で無くなった。トビムシの体サイズや形態などのtaritと場所、土壌の関係をみると、サイズや、触角、脚の長さが大きい物ほど、広葉樹林に多いという傾向が一貫してみられた。これは、大型種あるいは表層で活動的な種が広葉樹林を好む一方、ヒノキ林の、緻密な有機物層が発達すると大型種は入り込みにくいためと考えられた。 スギ林と広葉樹林の組み合わせ、ヒノキ林と広葉樹林の組み合わせいずれにおいても、トビムシ群集の種組成には、土壌の効果より、場所の効果が強い傾向がみられた。一方、ヒノキ林では種組成の場所間の違いは、体サイズとの関係性により、より明瞭に説明された。これは、ヒノキの場合スギと比べると、供給される落葉の質により、落葉層がより緻密になりやすく、トビムシ各種のサイズや活動性をとおして、種間で場所の選択が別れやすくなったためではないかと推察された。
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