間伐に伴う森林流域から下流域への懸濁物質(SS)およびセシウム137(Cs-137)の流出の実態を明らかにするため、茨城県内のスギ人工林・落葉樹林から成る森林で、間伐前から間伐後まで渓流水に含まれるSS濃度及びSSのCs-137濃度を調査した。試験流域では、2012年秋(流域の北東部の約1/5の面積を対象)、2013年夏(残りの面積を対象)に本数で35%の間伐率の列状間伐がスギを対象に実施され、谷沿いに作業道が作設された。間伐後、出水時のSS濃度は間伐前より高い値が観察された。ただし間伐前より高いSS濃度の出現回数は、間伐翌年から急激に減少した。作業道路面の被覆度(当初は平均26%)は約2年後に81%、約3年後に89%と、間伐直後より大きく上昇した。これらより、間伐により作業道等裸地が生じSS流出が増加すること、作業道の被覆度が回復しSS流出が抑制されることが示された。SSのCs-137濃度は間伐中、間伐後に明確な上昇は観察されず、時間とともに低下する傾向であった。以上より、間伐中、間伐後において明確なCs-137濃度の増加といった、間伐に起因すると考えられるCs-137の下流域への流出増大の兆候は認められなかった。間伐直後、出水時のSS流出は増えることから、Cs-137の流出増加が懸念されるが、大雨出水時のSSに含まれるCs-137濃度の低下、流域内部の裸地の減少によりCs-137流出を抑制する現象も起こることが確認された。SSに含まれるCs-137は有機物または鉱物と結合し渓流を流下しており、SS中の有機無機成分組成との関連が示唆される。山形、秋田の3森林流域で、降雨出水時・平水時の渓流水におけるSSの有機無機成分組成を調べた。その結果、SS濃度が高いときの有機成分割合はおよそ一定の値に収束する傾向があった。またその収束値は30から50%と幅があり、出水時のSSの有機無機成分組成は流域によって異なることが示唆された。
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