土壌水分変動が土壌呼吸の温度依存性(Q10)におよぼす影響を評価するため、降雨遮断による土壌乾燥処理区を設け、土壌呼吸観測をおこなった結果、乾燥による土壌呼吸のQ10の低下が確認され、その変動は異なるQ10を持つ根呼吸と微生物呼吸の乾燥に対する応答の違いに起因することが示された。 茨城県かすみがうら市千代田苗畑構内にある40年生スギ人工林において、樹幹の間(約2×5m)にビニールシート(2.7×5.4m)を高さ1~1.5mに設置して降雨を遮断し、乾燥区を設けた(4反復)。各乾燥区と対照区に自動開閉チャンバを設置し1時間毎に土壌呼吸を連続測定した結果、乾燥区のQ10は対照区のQ10より有意に低下した。また、乾燥区および対照区の細根・リター・鉱質土壌を採取し、室内培養によってそれらのCO2放出速度およびそのQ10を測定したところ、細根のCO2放出速度およびそのQ10は有意な処理間差は見られなかった。一方、細根と鉱質土壌のCO2放出速度は乾燥区で有意に低下し、それらのQ10はいずれも有意な処理間差はなかった。また、CO2発生速度のQ10は細根・リター・鉱質土壌の順に大きかった。これらのことから、乾燥処理によって土壌呼吸の発生源である根呼吸や微生物呼吸のQ10が変化したのではなく、根呼吸よりも乾燥の影響を受けやすい微生物呼吸が低下し、異なるQ10をもつ微生物呼吸および根呼吸の土壌呼吸全体に対する寄与率が変化することによって土壌呼吸のQ10が変動したと考えられた。
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