研究課題/領域番号 |
26450218
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
長倉 淳子 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (70353787)
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研究分担者 |
古澤 仁美 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, チーム長 (40353841)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 窒素負荷 / 酸性化 / 葉の養分濃度 |
研究実績の概要 |
特定養分だけが供給され続けると、樹体と土壌の養分バランスが崩れ、樹木に悪影響を及ぼすことが懸念される。37年間連年施肥(窒素・リン・カリウム施肥区、窒素・リン施肥区、無施肥区)が行われているウダイカンバ林とトドマツ林を材料とし、葉の養分濃度、土壌の可給態養分の量と質、水ストレスの指標である炭素安定同位体比を調べた。 2014年8月に表層土壌、ウダイカンバ成葉、トドマツ当年葉・一年葉、10月にウダイカンバ新鮮落葉の試料を採取した。葉の養分分析の結果、ウダイカンバは施肥区でP濃度が高く、Mg濃度が低かったが、トドマツは施肥区でK、Mg濃度が低かった。施肥に対する応答には樹種間差があること、施肥によって施肥元素(P、K)の葉中濃度が高まるとは限らないことが明らかになった。両樹種共に施肥区で葉のAl、Mn濃度が高まっており、AlやMnが溶出していると考えられた。表層土壌については、無施肥区に比べて施肥区ではpHが低下し、微生物バイオマスC、N量が減少する傾向が認められた。土壌pH矯正処理(pH+1程度増加)が土壌微生物バイオマスへ及ぼす影響を室内培養実験によって検討したところ、初期値と培養後では微生物バイオマスに違いが認められるものの、pH矯正の有無で顕著な違いは認められなかった。これらの結果から、長期的な施肥によってpHだけではなく蓄積する土壌有機物の質的な変化が生じていて、そのことが微生物バイオマスに影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年に採取した葉、落葉の養分分析、炭素安定同位体比分析は完了した。土壌の炭素窒素濃度、微生物バイオマス(窒素、炭素、リン)量の分析も完了した。現在土壌微生物バイオマスカリウムの定量法を検討中である。これらはほぼ予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者、研究分担者の所在地は、試験地から遠く、また二人とも幼児・小児の育児中であることから、試験地に頻繁に通うことができない。したがって、試験地に近い連携研究者らの協力が欠かせない。密に連絡を取り合い、研究を遂行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験地へのサンプリング出張を2回予定していたが、業務や育児の都合で行くことができなくなった。このため、旅費の使用額が減額した。なお、予定していたサンプリングは札幌市在住の連携研究者の尽力により予定通り行うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は実験補助員を雇用する。また、当該年度の成果から、新たに酸素安定同位体比の分析も必要と判断したので、その分析経費とする。
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