研究課題/領域番号 |
26450222
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研究機関 | 長野県林業総合センター |
研究代表者 |
大矢 信次郎 長野県林業総合センター, 育林部, 主任研究員 (50584885)
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研究分担者 |
今井 信 長野県林業総合センター, 木材部, 木材部長 (50609146)
清水 香代 長野県林業総合センター, 育林部, 研究員 (00631714)
植木 達人 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90221100)
城田 徹央 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10374711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カラマツ / 天然更新 / 実生密度 / 下刈 / 林分構造 / 曲げ強度 / 未成熟材 |
研究実績の概要 |
2.カラマツ天然更新成功地における立地条件解明 天然下種更新したカラマツ実生発生地において、下刈りの効果と手法を検討することを目的として、実生密度および個体サイズと他種との競合状態の定量化を試みた。調査地に20m×2m のプロットを3 箇所設置し、2016年~2017年の2年間、実生の調査と競合状態を把握すると同時に、異なる下刈り処理を実施し、下刈りの効果を検証した。競合状態を考慮して実生成長量をモデル化するため、SfM 技術を用いて雑草木群落の3 次元情報を把握した。分析の結果、無処理区でも競合状態の低い個体は、D2H増加量が大きかった。しかし、良好な成長を示した個体の割合は、下刈り処理区では約40% であったのに対し、無処理区では13% 程度と大幅に少なかった。順調な成林を促すうえでは、初期本数密度と競合状態を考慮し、状況に応じて下刈り処理を行う必要があると考えられた。 また、青木湖スキー場跡ではカラマツを含む高木性の樹木の更新が局所的であり、多くをススキやオオイタドリといった高茎草本群落、タニウツギなどの低木群落が占めていた。高木性樹木のパッチには、比較的まとまりのある密な更新立地と、疎な更新立地があった。後者は前者よりも斜面が急であり、根本曲がりが顕著であることから、積雪の移動による物理的な撹乱によって速やかな定着が阻害されていると考えられた。 3.カラマツ天然更新材の特性調査 カラマツ天然更新木と人工植栽木の強度特性を調査した結果、両者の比重、平均年輪幅及び曲げ強さ等で統計的な差は確認できなかった。これは、天然更新木においても、隣接した人工植栽木とほぼ同様の下刈り等保育作業が行われ、成立本数に大きな差がなく、結果として未成熟材・成熟材の割合に差が生じなかったためと推察された。ただし、各試験体においては、木口断面内の成熟材率が高くなると曲げ強さも高くなる傾向が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.カラマツ人工林における更新伐施業によるカラマツ天然更新の誘導とコスト評価 南牧県有林と北相木村有林のカラマツ人工林において、カラマツの天然更新を誘導するための伐採・地表かき起こしを行い、実生を発生・定着させることができた。現在まで3年間、実生の消長及び成長を継続的に調査し、天然更新の動態を把握している。 2.カラマツ天然更新成功地における立地条件解明 北相木村有林のカラマツ天然更新地における下刈り試験により、更新初期段階における下刈り施業の効果が明らかになりつつある。また、蓼科アソシエイツスキー場跡地および青木湖スキー場跡地におけるカラマツ天然更新の動態を調査しており、天然更新成功地における立地条件が徐々に解明しつつある。 3.カラマツ天然更新材の特性調査 天然更新木及び人工植栽木の年輪構成の比較(成熟材及び未成熟材)と強度比較を実施し、両者の年輪及び強度の特性を明らかにした。統計解析の結果、年輪構成、強度とも天然・人工の間に差は認められなかった。天然更新地においても人為的な密度管理が行われていたことに起因すると考えられるが、個別の試験体で比較すると、未成熟材の割合が強度低下に影響を及ぼすことは確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.カラマツ人工林における更新伐施業によるカラマツ天然更新の誘導とコスト評価 これまでに調査したカラマツ天然更新地における実生の消長及び成長について結果を取りまとめ、2018年9月にマドリードで行われるFORMEC2018において発表するとともに、学会誌に論文を投稿する。 2.カラマツ天然更新成功地における立地条件解明 北相木村有林のカラマツ天然更新地における下刈り試験の結果を取りまとめ、森林利用学会誌に論文を投稿する。 3.カラマツ天然更新材の特性調査 天然更新木及び人工植栽木の年輪構成及び強度比較について結果を取りまとめ、木材学会誌に論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「1.カラマツ人工林における更新伐施業によるカラマツ天然更新の誘導とコスト評価」では、今年度は学会発表に旅費を要さなかったため、次年度に集中して使用することとした。 「2.カラマツ天然更新成功地における立地条件解明」においては、調査を円滑に行うために地域住民との調整に時間をかけたため、調査時間が限られた結果、当初予算を全額消化できなかった。一方で、次年度の準備は整っており、5月から植生調査、毎木調査、ドローンによる広域調査に入ることができる。 「3.カラマツ天然更新材の特性調査」では、学会発表の旅費を別会計から支出したため、残額が生じた。次年度に論文投稿費用等に充てたい。
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