| 研究課題/領域番号 |
26450224
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| 研究機関 | 宇都宮大学 |
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研究代表者 |
羽生 直人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10292575)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | 木材保存 / 防腐 / ホウ素 / 木材腐朽菌 / タンパク質 / 変性 / 固定化 |
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| 研究実績の概要 |
重金属を使用しない，環境適合性に優れた木材防腐処理技術の構築をめざして検討を行った．本研究で注目したホウ素系化合物は，防腐効果が高く，環境負荷も少ないといった特徴を持つにもかかわらず，木材中での定着性が低く，耐候性が低い（水によって容易に溶脱してしまう）ため，木材防腐剤としての実用化は進んでいなかった．そこで，ホウ素系化合物の木材中への定着性を向上させるために，牛乳からチーズなどを製造する際に廃棄物として発生する乳清（whey）由来の水溶性タンパク質の変性を利用することを試みた．すなわち，ホウ素系化合物と水溶性タンパク質を木材に同時に注入した後，加熱などの処理を行い，タンパク質を変性させて不溶化することによって，ホウ素系化合物を木材中に「閉じ込める」ことをめざした．
本年度は，注入処理と変性処理のうち，特に前者に焦点を当てて，その処理条件の影響を 検討した．ホウ素系化合物と水溶性タンパク質を種々の濃度で組み合わせた溶液を木材試料に注入した後，タンパク質変性のために熱処理をおこない，得られた木材試料の耐朽性を，JIS 規格に準拠した室内腐朽試験で評価した．その結果，ホウ素系化合物と水溶性タンパク質の混合比を適切に設定することによって，培養終了後の木材試料の質量減少率が約3％と，「腐朽しない」と評価される水準の耐朽性が得られることが明らかとなった．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討では，注入処理条件の影響を明らかにすることに注力した．
木材試料にはスギ辺材から切り出した木材片を，ホウ素系化合物としてホウ酸およびホウ酸ホウ砂（四ホウ酸ナトリウム十水和物）をそれぞれ使用した．一方，水溶性タンパク質としては分離乳清タンパク質（Whey Protein Isolate（WPI））を使用した．これらを種々の濃度で組み合わせた溶液を木材試料に注入した後，タンパク質変性のために，121℃の蒸気処理および105℃の熱風処理をおこなった．得られた処理木材試料は，溶脱処理をおこなった後，「JIS K1571：2010 木材保存剤－性能基準およびその試験方法」に準じて褐色腐朽菌オオウズラタケ（Fomitopsis palustris）および白色腐朽菌カワラタケ（Trametes versicolor）による室内腐朽試験に供した．その結果，ホウ素系化合物と水溶性タンパク質の混合比が処理木材試料の耐朽性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった．さらに，腐朽試験終了後の木材試料の質量減少率が約3％と，「腐朽しない」と評価される水準の耐朽性が得られる適切な混合比を見出すことができた．
以上のことから，おおむね順調に進展していると評価した．
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は，上記で得られた結果の再現性を確認するとともに，ホウ素系化合物をより安定して木材中に保持させることを目的として，ホウ素系化合物とともに注入したタンパク質の変性条件の検討を中心に進める．
一般に，タンパク質の変性・不溶化は加熱によって引き起こされることから，加熱処理によって，木材に注入されたホウ素系化合物の定着性は大幅に向上していると思われる．しかしながら，これまでに検討した加熱変性条件では，溶脱処理中にホウ素系化合物の溶脱が充分に抑えられていないことが認められたため，定着性向上には改善の余地があると考えている．そこで，加熱条件の温度や時間などについてさらに詳細に検討を進める予定である．
これらの検討を通して，2種の木材腐朽菌（褐色腐朽菌オオウズラタケおよび白色腐朽菌カワラタケ）に対して，「腐朽しない」と評価されるための基準である，「培養終了後の木材試料の質量減少率が3％以下」が安定的に達成される処理条件の確立をめざす．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
本年度は使用するタンパク質を1種類（分離乳清タンパク質）に絞ったため，その分子量測定は行っていない．そのため，予定してたHPLCカラムおよび関連備品の購入を見送ったことが，大きな理由の一つである．
また，出席した学会の開催場所が東京であったため，旅費の支出が予定より低額であったことも影響している．
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| 次年度使用額の使用計画 |
使用するタンパク質の分子量測定は今後実施する予定なので，HPLCカラムおよびその関連備品の購入に充てる予定である．
また，実験をより効率的に推進するために，研究室に在籍している大学院生などの協力を得るための謝金にも充てることを考えている．
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