研究実績の概要 |
石油分解菌及び石油分解菌を担持した担持体を用いて、以下の結果を得た。 (1)石油分解菌からの担持体の作製及び浄化率を高める分解菌の組合せの検討、原油(C重油)汚染海岸土壌の浄化:数種の石油分解菌を数種の担体に担持(単独または混合)させて作製した担持体(浄化材)を用いて原油(C重油)汚染(1,000ppm)海岸土壌の浄化を行った。担体としてカッポクが最適であった。また、2種の分解菌(NG007, S133)を見出した最適割合で組合せた場合が最も高い浄化率(約80%,15日処理)であった。この浄化材を用いて原油(C重油)汚染(1,000ppm)海岸土壌が浄化(各々約83, 90%, 30, 60日処理)できた。また、浄化時の石油分解酵素の活性の経時変化も調べた。さらに、浄化時の原油(C重油)中の各成分の動態も明らかにした。 (2)石油分解菌の土壌中及び土壌の種類による分解菌の成育状況:2種類の海岸土壌(砂質及び粘土質土壌)中での石油分解菌の成育を調べた結果、砂質土壌の方が分解菌の生育速度が速い(粘土質土壌の約1.3~1.5倍)ことを見出した。 (3)浄化材を用いる原油(C重油)汚染海岸土壌の浄化条件の検討:高濃度の原油(C重油)汚染(15,000ppm)海岸土壌の浄化を行った結果、浄化率は各々約35, 40, 50%(30, 60, 120日処理)であった。浄化率を向上させるため、定期的に一種の栄養源を添加した結果、浄化率は約1.2倍~1.3倍増加するとともに、分解菌の酵素活性は約1.3~1.5倍増加することを見出した。 (4)石油分解菌によるPAHsの酵素分解:石油分解菌(SM46)からの粗酵素及び粗酵素を固定化した固定化酵素により海水条件下でベンゾ[a]ピレン(BP)(20ppm)が各々約30~60%,約30~80%分解(2~30日処理)できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画を実施し新規な成果を幾つか得た。(1)分解菌を担持させる最適の担体を見出した。(2)2種の分解菌を組合せると単独の分解菌よりも酵素活性が高くなり浄化率も高くなること、その最適組合せ割合も見出した。(3)この割合で2種の分解菌を担体に担持させて作製した担持体(浄化材)を用いて原油(C重油)汚染(1,000ppm)海岸土壌を浄化すると高い割合で浄化できることを見出した。浄化時間が長くなる程、酵素活性が低下することも見出した。この事は浄化時間が長くなるとともに、分解菌の活性が低下することに関係していると考えられる。(4)汚染海岸土壌中での分解菌の成育を促進させることが浄化率向上に関係していると考えられたので、定期的に栄養源を添加して検討した。その結果、分解菌が産出する分解酵素活性が増加することを見出した。(5)さらに、数種の酵素賦活剤(無機塩や界面活性剤)の添加により酵素活性が増加すること、その最適添加濃度も見出している。しかし、栄養源添加と酵素賦活剤との組合せについては検討していないので、これらの検討による浄化率の向上についてさらに検討が必要と考えられる。また、高濃度の原油(C重油)汚染(15,000ppm)海岸土壌の浄化の検討も必要と考えている。 さらに、原油(C重油)汚染海岸土壌の浄化だけでなく、原油(C重油)よりもNSO部やアスファルテン部の割合が高く原油(C重油)よりも浄化が難しいと考えられる原油(アスファルト)汚染海岸土壌の浄化や、原油(C重油)よりも脂肪族及び芳香族炭化水素部の割合が高く原油(C重油)汚染海岸土壌よりも浄化がし易いと考えられる原油(A重油)汚染海岸土壌の浄化も今後の検討課題と考えている。
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