研究課題/領域番号 |
26450234
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
藤森 文啓 東京家政大学, 家政学部, 教授 (50318226)
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研究分担者 |
小松 あき子 東京家政大学, 家政学部, 助教 (20649371)
近藤 秀樹 岡山大学, その他部局等, 准教授 (40263628)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キノコ / 担子菌 / 菌類ウイルス / マイタケ / Grifola |
研究実績の概要 |
キノコ(担子菌)は食用にも工業用にも利用できる生物資源である。たとえば、担子菌は多数の産業上有用な各種酵素群を産生していることが知られている。リグニン分解酵素群はアルコール生産の効率化に有用であるし、タンパク質分解酵素群は食品加工等に用いられるなど食用・工業用としてキノコの生産は安定的に行われる必要がある。現在、食用キノコの多くは人工栽培方法が確立され、工場内での大規模栽培が可能となっている。栽培方法の多くはオガ粉(オガコ)を用いた菌床栽培によって行われている。しかし、栽培方法は確立されているが、子実体形成の分子生物学的なメカニズムに関してはキノコ全般で解明されていない。当研究室ではマイタケを対象に栽培の安定化を目指し、遺伝子情報を用いて子実体形成機構の分子レベル解析を行っているすなわち、マイタケ全ゲノムおよびトランスクリプトーム解析から、マイタケ全ゲノムにマッピングされないmRNA配列が880断片存在することを明らかにしてきた。これらのmRNA配列を対象にBLASTn解析による遺伝子探索を行ったところ、配列断片からpartitiviurs様配列(RNA1(RdRp),RNA2(CP))とourmia様配列(RdRp)が存在することが判明し、partitivirus様配列はGfPV1(Grifola flondosa partitivirus virus 1)、ourmia様配列はGfOLV(Grifola flondosa ourmia-like virus)と仮称し、それぞれのウイルスの機能解析を行っている。 マイタケから発見された上述の2種類のウイルスがマイタケ菌糸の細胞に対してどのような働きをし、マイタケの形態や、遺伝子発現、タンパク質誘導にどのような影響を与えているのかを検証するため、ウイルスの性状解析およびウイルスフリー株の作出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両ウイルスの発現様式の特徴として、マイタケ正常(Gf-N2)にはGfPV1の遺伝子発現量(ウイルス蓄積量もリンクすると推定)が高く、マイタケ変異株(Gf-A1)には GfOLVの遺伝子発現量が高い傾向を示すことが判明した。2種のウイルスについて遺伝子発現プロファイルが異なる傾向を示していることから、これらのウイルスがマイタケ内の遺伝子群やタンパク質群に対してどのような制御を行い、最終的に形態形成に影響を与えるのかを解明するためGfPV1とGfOLVのフリー株を得た。今後は、これらの菌糸体かた得られたmRNAを用いたトランスクリプトーム解析を実施できる体制となったので、おおむね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に関連する研究論文発表を3報行った。 今後は得られたウイルス感染株と非感染株の培養条件や子実体発生条件の違いによって起こる、表現形質の違いについて詳細に解析し、そこで得られるサンプルのマイクロアレイによる内部遺伝子群の変動解析を実施する。 これまでに、マイタケゲノムのデータベース構築は完了しており、データベースを用いた通常のマイクロアレイにより本研究目的を達成するように行うか、もしくはRe-Sequence技術を用いて、多検体で実施するかを決めて、本年度の研究を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は研究の根幹であるマイクロアレイ解析に予算を割いた。正常株とウイルス感染株との比較解析を行い、当初はその遺伝子発現解析の追試実験として定量PCRを実施する予定であったが、マイクロアレイのコンピュータ解析に時間を要したため、定量PCRによる発現変動遺伝子群の追試実験は次年度に行うこととしたために若干の予算が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目は、マイクロアレイの解析によって絞り込んだ遺伝子群の発現追試解析を実施する。多くの場合定量PCRによる追試実験を行うため、プライマーの合成費やPCR酵素および電気泳動等による検出など、試薬費、消耗プラスチック費などが必要となるのでその予算に回すこととで実験を遂行する予定である。
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