研究課題/領域番号 |
26450239
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
松井 直之 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (80353853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リグニン / 葉 / DFRC法 |
研究実績の概要 |
樹木の葉に含まれるリグニンについて、その葉への沈着時期を明確にとらえるため、イロハモミジ、ブナの葉の芽吹き後、4月上旬から週に一度程度の間隔で葉試料を採取した。各試料から溶媒抽出で低分子抽出成分を除去した後にDFRC法(リグニンをアセチル誘導体にした後、金属亜鉛で還元的に分解する方法)による分解に供し、リグニン由来の分解生成物をGC-MSで分析・定量した。イロハモミジ、ブナの両試料ともに4月中の葉から得られたリグニン分解生成物量はわずかであったが、5月1日以降に採取した試料では生成物が急増しており、4月の最終週頃に葉へのリグニン沈着が短期間の内に集中的に生じたことが明らかとなった。これは樹木の木部リグニンの沈着が春から夏にかけて継続して起こっているのとは対照的な結果である。リグニンの沈着時期と気象データを比較した結果、4月最終週から平均気温が15℃を継続的に上回るようになっており、気温が一定日数継続してある程度の水準以上になることがリグニン沈着開始のカギの一つになっていることが予想された。また、4月中の葉では葉そのものが十分に大きく伸展していてもリグニン量は少なく、葉のサイズ拡大とリグニン沈着の間には時間的なずれがあること、すなわち葉のスケール的な成長が一段落した状態になった後にリグニン沈着が生じていることが推測された。葉の成長が5月に入ってから起こるシラカシについて同様の解析を行ったところ,この樹種のリグニン量の増加は5月の下旬に観察されたことから、リグニン沈着の時期は樹種ごとの葉の成長時期に応じて異なることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の26年度の計画としてリグニンの葉への沈着時期を明らかにすることを挙げ、ブナとカエデにおいて4月下旬に、またシラカシにおいて5月下旬の葉の展開後にいずれも短期間の内にリグニンの沈着が起こっていることを示すことができた。このため研究はほぼ予定通りの成果を挙げており、おおむね順調な伸展と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究がほぼ順調に伸展したため、研究2年目である平成27年度は当初計画通りに樹木の葉の中でのリグニンの維管束(葉脈)組織への局在の立証を目的として研究を進める。酵素処理、解剖的分離などの様々な手法を用いて葉から葉脈組織を分離し、そのリグニン量をDFRC法で評価して葉肉組織との比較を行う。 研究最終年度である平成28年度も当初計画通りに、葉にとってエネルギー源として非常に重要であると同時に大きな酸化ストレス要因でもあると予想される太陽光の強さによって、葉のリグニン量に影響があるかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の後半に微量葉試料の粉砕をより精密および効率的に行うための高性能な粉砕器の取得が望ましいと考えられたが、その時点での残額見込みでは付属品を含めての当該機器の購入が困難であったため、購入を次年度に行うこととし、助成金の残額を次年度使用額として措置した。
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次年度使用額の使用計画 |
微量試料に対応できる粉砕装置および回転刃,フィルタなどの付属品を購入する予定である。
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