セルロースを基材にした新規複合化材料の創製を目的として、セルロースと無機シリカをハイブリッド化した材料調製法の開発を検討した。 最終年度は、セルロース材料の高性能化を目的として、アルコキシシランを用いたゾル-ゲル法によるセルロースシート表面の無機シリカコーティングを検討した。セルロースシートは、国産スギパルプから製造したセルロースナノファイバー水懸濁液を、乾燥させて作製した。シリカコーティング試薬は、4官能性のテトラメトキシシラン、3官能性のメチルトリメトキシシラン、メタノール、水、ならびに触媒として少量の過塩素酸リチウムを混合した後、48時間エージングして調製した。セルロースシートを上記混合コーティング液に室温下10分間浸漬した後、加熱乾燥処理をして、無機コーティングされたセルロースシートを得た。処理後のシートは光沢外観を有した。X線回折プロファイルから、セルロ-ス結晶構造は処理前後ともI型結晶を保ち、構造変化は見られなかった。コーティングセルロースシートの力学物性を測定したところ、未処理シートの値と比較して、引張弾性率および引張強度ともそれぞれ増大した。また、破断伸びにはほとんど変化が無かったことから、本処理法は、基材となるセルロ-スへの大きな構造変化を与えず、力学物性を向上させる無機コーティング処理であることが示唆された。さらに、コーティングによってシートの水分吸着率が半減した。以上の結果から、本研究にて開発されたアルコキシシランによるシリカコーティング法は、セルロースナノファイバーシートの力学物性を向上させて、はっ水性を付与することが明らかとなった。 本研究事業において得られた成果は、セルロースとアルコキシシランを用いて調製するセルロース-無機ハイブリッド材料開発のための基礎的知見となる。
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