研究課題/領域番号 |
26450241
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
中田 了五 国立研究開発法人 森林総合研究所, 北海道育種場, 課長 (60370847)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物生理 / 樹液流 / 材質 / 心材 / 水分生理 / 木材組織構造 |
研究実績の概要 |
最新技術を用いて樹幹内放射方向での水ポテンシャル勾配が生じる要因を明らかにし、もってwetwood形成メカニズムの解明に寄与することを目的として、本研究では、針葉樹における樹液流量および速度・樹幹内温度勾配・樹幹含水率について、日変動および季節変動をモニタリングする。27年度には、計測条件の精査と長期間連続モニタリングの試行を行った。 樹液流センサー2台を逐次運用することにより2日程度の樹液流モニタリングを間欠的に実施した。このモニタリング期間はバッテリーの制約によるものである。そこで、太陽電池パネルとバッテリーの組み合わせにより数ヶ月間の連続測定が可能となるシステムについて試行した。天候に左右されるものの長期間連続的なモニタリングが可能となったので、28年度には継続的なモニタリングを実施予定である。以上により、季節別の樹液流データの集積を進めた。また、使用している樹液流センサーは樹液流を測定しない時には樹幹内温度勾配を測定することが可能であるため、季節別に樹幹内温度勾配のモニタリングを実施した。 樹幹含水率については、供試個体数及び供試センサー数を増やし、継続的にデータ収集を行った。データの解釈についてさらに検討が必要なものの、比較的安価で長期間連続モニタリングが可能なシステムを確立できた。この成果については学会発表を行った。観測された樹幹の体積含水率は、1)機器設置直後1-2ヶ月に渡る、設置のための樹幹への穴あけによる樹幹含水率の減少、2)冬期間の樹幹の凍結による樹幹の誘電率の変化に伴う見かけの樹幹含水率の減少と春季の回復、3)蒸散に伴う樹幹径変動と水の誘電率の温度依存性に起因する樹幹含水率の見かけの日変動、4)降雨時の電気的ノイズによる見かけの樹幹含水率の変動、の4種類のノイズを含み、真の樹幹含水率は日変動・季節変動とも小さいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複雑化を伴う所属機関の物品購入手続きの変更および選定した機器の納入の遅れから、樹液流測定の長期間化に遅れを生じたが、逐次運用によりそれなりのデータ集積ができた。樹幹含水率については、データの解釈にやや困難があるもののデータ収集自体は極めて順調である。以上生じた問題点は、研究手法の新規性から想定内であり、研究目的の達成に大きな支障をもたらすものではないと判断し、自己評価をおおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画最終年度の28年度には、長期間モニタリングを継続し、またデータの細部を検討して、樹液流および樹幹含水率の同時モニタリング方法の確立を図る。 樹液流の観測に関しては、野外長期間連続観測にも成功し、測定自体に関する技術的な検討はほぼ終了した。現在1セットしかないソーラー発電システムを増設し、供試対象の2樹種の連続長期間観測を並行して実施することを可能とする。さらに、これまでの観測で明らかになったデータの解釈上の問題点と機器のキャリブレーションの問題点についてそれらの細部を検討し、得られたデータの適切な解釈を目指す。 樹幹含水率の観測に関しては、観測に伴う4種類のノイズを同定し、おおむね測定手法の確立ができた。今後はノイズの減少の方策を検討する。また、観測をさらに継続し、長期間のモニタリングとその結果得られたデータの解釈を進める。さらに、現在供試している2樹種に加え別の樹種を研究対象として、樹木樹幹の含水率の季節変動の多様性について研究を進める。 以上に加え、これまで独立して検討を進めてきた樹液流と樹幹含水率のモニタリング結果を統合し、辺材と心材の間に存在する水ポテンシャル勾配の形成原因の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入機器の納入価が当初予定を下回ったこと、年度末の学会参加のための航空運賃が早期予約により予定を大幅に下回ったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度の研究成果により研究の大きな進展を図ることを可能とするソーラーパネル及びバッテリーの有効性が示されたため、ソーラーパネル及びバッテリーを増設してさらに研究の進展を図るために使用する。
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