研究実績の概要 |
乾燥廃液の有効利用を目的として、二酸化窒素除去特性の解明を行ったところ、①乾燥廃液の二酸化窒素除去活性は同じ単位重量当たりの活性炭(市販の除去剤を想定)と同等かそれ以上であること、②除去後、活性炭は一酸化窒素を副産物として生成するのに対して、乾燥廃液は一酸化窒素などの副産物が生成しないこと、③二酸化窒素の除去活性は乾燥廃液の濃度依存的であること、④天然物として既知の除去活性物質であるトドマツ葉油よりも単位重量あたりの除去活性が強いことが判明した。次いで乾燥廃液の二酸化窒素除去活性の安定化と除去活性の向上を図る目的で、除去活性物質の探索を行った。具体的には減圧蒸留やシリカゲルカラムによる分離と除去活性試験を駆使して活性物質を探索したが、今回の試験により二酸化窒素除去活性の強い画分2種が得られた。更にそれらの画分よりセスキテルペン類としてδ-cadinene,α-muurolene, cadina-1(6),4-dieneが、ジテルペン類としてabietadiene,13-isopropyl-podocarpa-6,13-diene,pimaradiene,phyllocladene, isopimara-8,15-dieneがそれぞれ検出・構造決定された。これらの内、単離・精製できた物質の二酸化窒素除去活性を検討したところ、ジテルペン類の一種であるabietadieneにおいて極めて強力な二酸化窒素除去活性が確認された。この物質は廃液中の含有率が約7%であるが、別途調整したスギ木材溶媒抽出物からは1%未満しか検出されておらず、乾燥廃液特有の物質と考えられた。これらの成果は、未利用バイオマス資源である乾燥廃液の空気浄化資材として利用の可能性を示すものであった。
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