研究実績の概要 |
針葉樹合板製造工程で排出される未利用の乾燥廃液の有効利用を促進させることを目的として、含有有用成分として二酸化窒素除去活性及び酸化抑制効果のそれぞれに優れた物質を検索した。 その結果、二酸化窒素除去活性の高い画分には、cadina-1(10),4-diene, amorphene, cubebene等のセスキテルペン炭化水素及びabietadiene, sclarene, sandaracopimaradiene等のジテルペン炭化水素が見出され、酸化抑制効果に優れた画分にはcubenol, cryptomerione, gleenol等のセスキテルペンアルコール類及びferruginol,sandaracopimarinol等のジテルペンアルコール類が見出された。 これらの利用法として二酸化窒素浄化能に優れた塗工剤の開発を行った。乾燥廃液と相溶性の高いエチルセルロースをバインダーとして用い、それらをフィルム表面に塗布して機能性の塗工剤を試作したところ、乾燥廃液の添加割合が50%の試料は、活性炭添加試料が示す除去活性の83%(120分経過後)、添加割合が5%の試料でも活性炭添加試料が示す活性の67%(120分経過後)を有しており、乾燥廃液を添加した塗工剤は活性炭添加試料に匹敵する性能を有することが判明した。活性炭は二次生成物として一酸化窒素を生成することが知られており、またバインダーとの相溶性も悪かったが、乾燥廃液は二次生成物が生成せず、またバインダーとの相溶性に優れているので機能性の高い表面塗工剤として実用性が高いと考えられた。さらに乾燥廃液は酸化抑制効果に優れた物質も含まれていることから、塗工面の耐久性を向上可能であると考えられた。 本研究において得られた成果は、未利用であった乾燥廃液の有効利用法の開発のための基礎的知見となる。
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