研究課題/領域番号 |
26450243
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
小林 正彦 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (00397530)
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研究分担者 |
久保 智史 国立研究開発法人 森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, チーム長 (50399375)
片岡 厚 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (80353639)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 木材・プラスチック複合材料(WPC) / 加溶媒分解処理 / ポリプロピレン / 熱流動特性 / メルトフローレート(MFR) |
研究実績の概要 |
木粉と熱可塑性プラスチックを混練して製造する複合材料(WPCと略する)は、間伐材等の未利用木材や廃プラスチックを原料として利用でき、プラスチックと同様の成型加工が可能であるため、新しい木質系材料として注目されている。しかし実用に際し、プラスチックと比較して衝撃強度や疲労強度等の物性が低いことが問題となっている。本研究では、WPCの主原料である木粉を高級脂肪族アルコールで加溶媒分解処理し、木粉を分解し微細化するとともに木粉の表面を疎水化することが、最終製品であるWPCの衝撃強度、疲労強度等の力学物性に及ぼす効果を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、加溶媒分解処理木粉とポリプロピレンとの配合比を変えて様々なWPCを調製し、熱流動特性を測定することにより、加溶媒分解処理木粉の含有率の違いがWPCの成型加工性に及ぼす影響を評価した。さらに、熱流動特性の測定データを基に、WPCの射出成型条件の最適化を試みた。その結果、無処理の木粉を用いた場合には、木粉の含有率を50%から60%に増やすと、熱流動性の指標であるメルトフローレート(MFR)が35.8 g/10min から4.0 g/10min に低下した。一方、加溶媒分解処理木粉を用いた場合には加溶媒分解処理木粉を50%から60%に増やすとMFRは59.1 g/10min から33.7 g/10min に低下した。このことから、木粉の含有率を増加させると熱流動性は低下するが、木粉の加溶媒分解処理により、木粉の含有率を高めても流動特性の低下が低く抑えられることが判明した。WPCの射出成型を行った結果、MFRが約30 g/10min 以上のWPCにおいては、射出温度200℃、射出圧力9MPaでの成形が可能であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の達成目標であった、加溶媒分解処理木粉とポリプロピレンを加熱混練することによるWPCの調製と、調製したWPCの熱流動特性評価を行い、加溶媒分解処理木粉を使用することにより、熱流動性が向上することを明らかにしたこと、また、WPCの射出成型条件を決定し、WPC物性試験体の製造方法を確立したことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
加溶媒分解処理木粉とポリプロピレンを様々な配合で加熱混錬し、射出成型して製造したWPC試験体を用い、熱分析や顕微鏡観察により、木粉・プラスチック界面の相溶性を評価する。並行して、引張試験、曲げ試験、耐衝撃性試験などにより、木粉の加溶媒分解が、最終製品であるWPCの物性に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
プラスチック原料に現有のポリプロピレンを用いたため、次年度使用額が生じた。また、当該年度に導入した油圧式射出成型機専用の金型の購入が必要となり、当初購入を予定していた手動式射出成型機用金型の購入を取りやめたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実用実機と同様の条件で高精度にWPCの物性試験体を成形することが可能である油圧式射出成型機専用金型の購入を計画している。
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