研究課題/領域番号 |
26450245
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大林 由美子 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60380284)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋生態系 / 微生物ループ / 有機物分子変換 / 細胞外酵素 / 原生生物 / 従属栄養性細菌 / 物質循環 |
研究実績の概要 |
本研究は、海洋生態系での生物地球化学的物質循環過程の中でブラックボックスとして扱われがちな、水圏での非生物態有機物(溶存有機物、非生物体粒状有機物)の分解・分子変換プロセスに関する情報を得ることを目的としている。従来、海洋での非生物態有機物の分解・分子変換過程については、従属栄養性細菌の働きのみが強調されてきたが、本研究では、従属栄養細菌群集に加えて真核微生物(特に原生生物)の働きを考慮に入れ、これらの寄与を評価することを目指している。 海水から分離した繊毛虫株を用いたマイクロコズム実験では、繊毛虫の増加と海水中のタンパク質分解酵素(特にトリプシン型酵素)活性の上昇のタイミングが一致していた。一方、繊毛虫株を含まず細菌のみを含む対照区においては、トリプシン型酵素活性の上昇は見られなかった。また、至適pH試験の結果から、細胞外画分で得られるトリプシン型酵素活性は、細胞破壊等による繊毛虫細胞内の酵素の溶出や漏出によるものとは異なると考えられた。これらのことから、真核原生生物である繊毛虫が周辺海水中にタンパク質分解酵素を放出していることが示唆された。 また、前年度の研究で様々な細胞外タンパク質分解酵素活性を持つことがわかったラビリンチュラ類について、さらに研究を進めるため、連携研究者の協力のもと、新たに海水からの分離株取得を試みた。湾でありながら外洋的性質を持つ駿河湾の湾央部および湾奥部の測点において分離を試みた結果、両測点の海水からいくつかの株が新たに分離された。新たに分離された株の系統群および細胞外有機物分解特性については今後解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の所属機関異動等のため当初の予定とは一部順序を入れ替えるなどして実施しているが、マイクロコズム実験や新たな分離株の取得など、一定の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
生物間相互作用と有機物分解の関係をみるための野外調査およびマイクロコズム実験、原核微生物および真核微生物それぞれに対する生物活性阻害剤を用いたマイクロコズム実験を実施する。また、新たに分離した原生生物株の系統群および細胞外有機物分解特性の解析を行うと同時に、さらなる分離株の取得のための試料採取と野外調査も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関異動が続いたことに伴い、研究内容の実施順序を一部変更したため
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次年度使用額の使用計画 |
生物活性阻害剤を用いたマイクロコズム実験、生物間相互作用をみるためのマイクロコズム実験等を実施するための実験機材類、野外調査および連携研究者との共同研究実施のための旅費・消耗品費・機材輸送費等に使用する。また、成果発表のための英文校閲料・論文投稿料、学会等に参加するための旅費・参加費等にも使用する。
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