海産珪藻Leptocylindrus danicusの栄養細胞について全mRNA-seqを実施し,本種のタンパクデータベースを得た。次に,L. danicusの休眠胞子についてプロテオーム解析を実施した。まず,受光前,受光後1,5,10時間後の休眠胞子を回収して凍結保存した。休眠胞子よりタンパク質を抽出し,SDS-PAGEにて分離・銀染色し,ゲルの上端から下端まで均等に12分割した。各画分をゲル内消化後,質量分析に供した。その後,上述したL. danicusの全mRNAデータを用いて,タンパク質同定を行った。光照射1 h後にはクエン酸回路や糖代謝関連の酵素,光照射5時間後にはRNAヘリカーゼ,カルシウムシグナリング,脱リン酸化やリン酸化といったシグナル伝達関連の酵素および硝酸還元酵素が新たに発現していた。これらのことから,休眠胞子は受光後,エネルギーを消費しながら転写やシグナル伝達を活発に行うことが推察された。また,休眠胞子は光照射1 h後から光合成活性が急激に上昇させるというこれまでの解析結果を踏まえると,同時に栄養塩代謝を活性化させて光合成を行い,エネルギーを産生することも推測された。ただし,今回光照射によって変動が認められたタンパク質のほとんどは機能不明であったので,今後,各タンパク質の機能解析を進め,解析結果の全体像を見直す必要がある。
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