研究課題
【工程1 標本入手】2015年度に12個体のネズミイルカの胃内容物を,独自の漂着・混獲鯨類調査等により入手した。【工程2 胃内容物分析】過年度に得られていた標本も含め28個体について胃内容物分析を実施し,国立科学博物館ならびに千葉県立博物館の協力も得て種同定を行った。その結果,北海道周辺のネズミイルカはダンゴイカ科イカ類、イカナゴ、スケトウダラを主要な餌生物として利用していることが分かった。また妊娠したネズミイルカは、エネルギー獲得のため、摂餌量が増大することが示唆された。月ごとの食性の比較から、季節によって利用する餌生物が変化することが分かった。また混獲や漂着よりも、季節的な要因が食性に影響を与えていると示唆された。【工程4 音響観測装置準備・設置】4月に函館市臼尻沖定置網に音響観測装置を設置し,定置網近傍におけるネズミイルカの動態を観測した。また,7月に羅臼町峯浜沖定置網近傍に音響観測機器を設置した。【工程5 音響観測データ解析】2015年度までに得られた観測結果を解析した。雑音除去の結果,観測期間中,運動場で1228個,落し網で327個の鳴音を得た.運動場において出現が確認された18日間に54回の出現,落し網において出現が確認された10日間に28回の出現が観測された.一方、ネズミイルカの混獲は2014年に1回報告され,2015年は報告されなかった.観測期間中,運動場で出現が観測された日の割合(45%)に比べ,落し網で出現が観測された日の割合(36%),混獲が発生した日の割合(4%)は有意に少なく(χ2検定,P<0.001),落し網での出現の90%が混獲に繋がらなかった.以上の結果から,混獲されないネズミイルカが相当数運動場入口付近に出現しており,混獲が確認されていない日でも,落し網内にネズミイルカが進入・脱出していることが示唆された.
1: 当初の計画以上に進展している
漂着個体標本は,目標10個体に対して12個体が回収出来たこと,A-Tagの装着が漁業者の協力によってスムースにできたこと,現在得られている情報をもとに分析が進んでいることから,当初の計画以上に進展している。
得られた成果のとりまとめと発表を急ぎたい。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Acoustical Society of America
巻: 138 ページ: 1451-1456
10.1121/1.4928608
Marine Ecology Progress Series
巻: 535 ページ: 1-9
10.3354/meps11432
http://kujira110.com/