研究課題/領域番号 |
26450258
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
工藤 貴史 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00293093)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 資源管理 / 資源の持続的利用 / 資源の総合的利用 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に基づき、「課題1「資源管理型漁業」論の成果と今日的な研究課題について明らかにする」に取り組み、資源管理型漁業の展開過程と政策評価について先行研究をレビューし、その到達点と今日的な研究課題について明らかにした。2014年8月21日に山口県下関市において「資源管理型漁業」研究会を開催し、講師として水産大学校の西村絵美助教から『「資源管理型漁業」論の成果と展望』を講演いただき、その後、参加者8名と意見交換を行った。ここでの検討結果として、これまでの「資源管理型漁業」に関する研究は、その意義と成立条件について考察したものが主であり、静態的な認識論であったことを確認するとともに、今日的な研究課題として「資源管理型漁業」を動態的に捉え、漁業生産と漁業経営体数が同時に減少する現局面において、水産資源の持続的利用と漁業経営の再生産を実現するために新しい「資源管理型漁業」の萌芽を現場の実態から捉える必要があると認識した。 これらの先行研究の成果を踏まえて、今日的な研究課題および政策課題について2つの論文を発表した。ここでは、これからの労働力構成の変化に応じた生産力構造の再編によって、水産資源の持続的利用、総合的利用、効率的利用を実現する必要があり、これからの「資源管理が」において期待される漁協の役割について論じた。 なお、本年度は、現地調査を実施する予定であったが、より効率的に成果を得るためには、調査予定地の過去の調査研究を十分サーベイする必要があると判断し、次年度に実施することとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、現地調査を実施する予定であったが次年度に実施することとした。理由は、調査予定地は、いずれも先行研究が厚く蓄積されており、現地調査の事前にそれらの成果を十分サーベイしておく必要があるためである。したがって、本年度は調査予定地の過去の調査研究のサーベイに力点を置いて研究を進めることとした。このように現地調査は遅れているものの、「課題1「資源管理型漁業」論の成果と今日的な研究課題について明らかにする」についてはすでに論文を発表しており、十分な成果をあげることが出来たと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
2015年度は、「課題2:「資源管理型漁業」の展開過程と現状について明らかにする」に取り組む。「資源管理型漁業」の優良事例とされてきた漁業地区の資源管理が、漁業構造の変化や資源変動、市場条件の変化によってどのように変容してきたかについて明らかにする。とりわけ、漁業経営体数の減少によって資源管理の内容がどのように変化したのかについて注目する。また、漁業者集団による新しい対応・取り組みや行政・研究機関等との連携の進展にも注目する。そして、資源の持続的利用という点から現状の「資源管理型漁業」を評価し、その問題点について明らかにする。 現地調査としては、:所得均衡型の資源管理を実施していた事例を2 地区、プール制による資源管理の優良事例として評価されている事例を2 地区調査する予定である。 また、2013年漁業センサスが公表されたことから、それを用いて漁業管理組織の動向について分析する。具体的には漁業管理組織の有無と漁業経営の持続性との関係について明らかにする。また過去の漁業センサスのデータも用いて経営体数の減少が漁業管理の内容の変化に如何なる影響を与えているのかについて明らかにする。 これらの成果について、2 題の学会報告を行う(文献サーベイ+現地調査)。その学会報告に基づいて所得均衡型の資源管理を実施していた事例について論文を投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現地調査を実施しなかったため、次年度使用額が生じることとなった。調査予定地は、いずれも先行研究が厚く蓄積されており、現地調査の事前にそれらの成果を十分サーベイしておく必要があるためである。したがって、本年度は調査予定地の過去の調査研究のサーベイに力点を置いて研究を進めることとしたため、当初予定していた調査旅費分が残額(次年度使用額)となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
この使用額は、当初の計画通り、現地調査旅費として2015年度に使用することとする。調査地は4地点を3回訪問することとなっている。また、2回の学会発表(広島と北海道)を予定している。2015年度はこれらに加えて、統計資料、関連文献の購入、研究会の実施にともなう謝金等を予定している。
|