研究課題/領域番号 |
26450258
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
工藤 貴史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00293093)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 資源管理 / 資源概念 / 地域営漁計画 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画に基づき、課題2「資源管理型漁業の展開過程と現状について明らかにする」、課題3「資源管理型漁業の新たな展開方向について明らかにする」、課題4「資源管理型漁業が新たな展開方向に進むための課題について明らかにする」の3点に取り組んだ。 課題2では、大分県姫島村姫島漁協と北海道根室市歯舞漁協において現地調査を実施した。姫島漁協は、明治時代から「漁業期節」によって資源管理に取り組んでいるが、漁業者数が著しく減少した2000年代からは大きな変更が加えられていないことが明らかになった。歯舞漁協は、所得均衡を目的に共同漁業権各種承認方針による漁業調整が実施されているが、この取り組みにより資源の総合的利用も実現されていることが明らかになった。 課題3では、岩手県の地域再生営漁計画に取り組む岩手県宮古市重茂漁協を現地調査した。本計画は、漁協を核として地域漁業の存立条件の改善に取り組むものであり、資源管理型漁業の新しい展開といえる。 課題4では、先行研究レビューから資源概念の再検討を行った。その結果、資源は人間の価値認識に基づいた存在であり、1)資源となる生物、2)その生物の価値、3)そしてその価値を実現するシステム(生産システム)が存在することで機能するという結論に至った。このように資源を捉えるならば、資源の持続的利用は、生物量、価値、生産システムの持続性が確保されることによって実現されることになる。これまで資源管理は生物の量的持続性の確保に重点が置かれてきたが、今日では価値の持続性を確保しようとする取り組みも活発化している。一方、生産システムの持続性への対応はこれまでの現地調査の結果から見ると不十分であるといわざるをえない。水産資源の持続的利用を実現するためには、漁業者の減少・高齢化に応じて、資源・漁業・労働力・経営形態の組み合わせを柔軟に調整していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は体調を崩したことから、現地調査と学会等での成果報告が計画通りに実施することができなかった。そのため、本研究課題の研究期間延長を申請し、承諾された。なお、本年度の研究により本研究課題の結論の方向性については明確になったので、最終年度では本年度の遅れを取り戻すことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、課題3「資源管理型漁業の新たな展開方向について明らかにする」と課題4「資源管理型漁業が新たな展開方向に進むための課題について明らかにする」に取り組む。 具体的には、北海道釧路市漁協におけるマイワシの資源管理と6次産業化の取り組みについて現地調査を実施し、漁業・卸売市場・水産加工業者等の連携により産地全体が資源管理に取り組む意義と課題について明らかにする。また北海道野付漁協において漁業者の減少にともなう漁場利用の変容と資源管理制度の変更との関係について明らかにする。さらに、北海道では本年度から漁場有効利用対策を実施されており、この先進事例から資源管理型漁業の新たな展開方向とその課題について明らかにする。 成果発表は、2題の学会報告を行い、それに基づいて2つの論文を投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度は大学における組織改編に関連した教務関連業務(教務委員会委員担当)が多忙であったことと、2016年12月に喘息を発症したことから、研究遂行に当初予定していた時間を取ることができず、そのため次年度使用額が生じることとなった。なお、本研究課題は計画では2016年度が最終年度であったが、上記の理由により、補助事業の期間延長を申請し、承認を得ることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画としては、2016年度に実施することができなかった現地調査旅費として使用することとする。それに加えて学会発表旅費、関連文献購入、研究に関連する設備備品(関連図書、コピー用紙、プリンタカートリッジ等)を購入する。
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