研究課題/領域番号 |
26450259
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
古屋 康則 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30273113)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交尾 / 卵隠蔽 / 卵寄託 / 分子系統 / カジカ科 / 生殖腺 / 組織学 |
研究実績の概要 |
カジカ科ニジカジカグループに属するニジカジカ属2種(雄卵保護型)、ベロ属1種(雄卵保護型)、イダテンカジカ属1種(生殖様式不明)、サラサカジカ属2種(卵隠蔽型)、アナハゼ属4種(卵隠蔽型)、スイ属1種(卵隠蔽型)について、分子系統解析を行った。外群としてフタスジカジカ属2種(雄卵保護型)を用いた。その結果、本グループは雄卵保護型2属からなるクラスターと、イダテンカジカ属を含む卵隠蔽型3属からなるクラスターに分かれた。この結果により形態形質によって単系統とされていた本グループの系統関係が分子系統からも裏付けられたとともに、雄卵保護型と卵隠蔽型が姉妹関係になるという、繁殖生態と一致した系統関係が示された。 雄卵保護型のニジカジカ、ベロ、卵隠蔽型のサラサカジカ、アサヒアナハゼ、スイについて雄の生殖突起の形状、精巣組織の構造、精子の形態、卵巣での精子の貯留形態について調べた。雄卵保護型と卵隠蔽型では、生殖突起の形状、精巣内での精子形成の進行の部位差、精巣付随構造としての貯精嚢の有無、卵巣内での精子の貯留形態に明瞭な差がみられた。一方、精子の頭部の形態は両繁殖様式の違いとは無関係であることが示された。以上の結果から、分子系統でみられた雄卵保護型と卵隠蔽型の2系統における生殖関連形質の違いが鮮明となり、各形質が繁殖様式とどのように関連しているのかを考察する上で重要な知見が得られた。 複数種のホヤやカイメンから本グループのものとみられる卵が採集され、これら卵についてミトコンドリアDMAにより種判別した結果から、6種の卵隠蔽種(サラサカジカ、アナハゼ、アサヒアナハゼ、アヤアナハゼ、キリンアナハゼ、スイ)における産卵場所が明らかとなり、種特異的な産卵場所の選択性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度に実施予定であった分子系統解析は予定通りに実施し、ほぼ完結できた。試料の採集については、富山湾、隠岐諸島、三浦半島で実施し、多数の試料を得ることができた。これらの試料を含めて、既存の試料について生殖関連形質の解析を進めることができた。また、無脊椎動物からの卵の採集と種判別も実施することができた。 得られた結果については学会の大会にて発表することができた。以上の成果は当初の予定を上回ったものであり、研究は極めて順調に進行している。 一方で、生殖関連形質の解析のための試料採集ができていない種(イダテンカジカ属)もあり、次年度は本種の試料採集が最重要課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
生殖年周期の解明を中心に進める。前年度に採集適地をみつけたことから、サラサカジカ属のキヌカジカとイダテンカジカ属のイダテンカジカを定期的に採集するとともに、稚魚からの飼育を試み、1年を通じた生殖腺の発達過程と生殖関連形質の発現状況を継続観察する。これにより、本研究における重要な課題の一つである、各属における生殖関連形質の解明を完了することを目標とする。また、これらの魚種の飼育によって、前年度に実施できなかった精子の運動に関する観察実験を実施する。 ニジカジカグループの各属間の関係は前年度に完了できたが、各属内の種間の系統関係については未だ不明である。そこで、試料採集活動の範囲を拡大して、本年度はアナハゼ属全種の採集を目指す。具体的には佐渡島、能登半島、三陸沿岸を対象とする。得られた試料について分子系統解析を実施し、アナハゼ属の系統関係を明らかにする。また、アナハゼ属内における生殖関連形質の種間比較を実施する。これにより、各形質の適応的な意義を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に支出すべき緊急性のある物品・事項はなく、残額は少額であると判断し、支出を控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度には当初の計画には含まれていなかった実験魚の飼育を実施するため、飼育機器や餌料等の購入に充てる予定である。
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