研究課題/領域番号 |
26450261
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高木 基裕 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (70335892)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マダイ養殖 / 機能遺伝子マーカー / 遺伝的影響 |
研究実績の概要 |
マダイ養殖は主に沿岸域に海面網いけすを設置して行われている。そのため、自然災害や事故によるいけす網の損壊、または養殖魚や種苗生産用親魚のいけす内での産卵によって、これまでに多くの養殖マダイが自然界に散逸していると考えられ、養殖が盛んな海域ではこれら散逸個体が天然集団の遺伝的多様性を攪乱している可能性がある。そこで養殖が盛んな海域におけるマダイの遺伝的集団構造を調べ、マダイ養殖が天然集団に及ぼす遺伝的影響を明らかにすることを目的とした。 供試魚に、マダイ養殖が盛んな愛媛県宇和島海域でまき網、カゴ捕獲および釣獲で漁獲された個体(n=139)とマダイ養殖の生産は盛んでは無いもののマダイの種苗生産場が複数ある愛媛県北部の瀬戸内海域で漁獲された個体(n=103)を対照として用いた。集団遺伝解析には7種類のマダイ用マイクロサテライトマーカーを用い、各種集団遺伝解析ソフトウェアを用いて遺伝的多様性を求め、各集団間の遺伝的距離を作成した。また、アサイメントテストを実施することにより、天然集団における養殖由来の個体の混入率を推定した。 各集団の有効アリル数は瀬戸内海域で22.6、宇和島海域内のまき網で22.3、カゴ捕獲で21.2、釣獲で18.0であり、釣獲と他集団との間で有意な差が認められた。アサイメントテストの結果、養殖が盛んな宇和島海域では解析方法により13.7-30.2%の割合で養殖由来の個体の混入が推定された。系統樹の結果、瀬戸内海域と宇和島海域のまき網、カゴ捕獲が一つの天然集団クラスターを形成したことに対して、高い割合で養殖個体の混入が確認された釣獲は別の1つのクラスターを形成し、他集団との遺伝的分化が示唆された。以上の結果から、養殖が盛んな海域では多くの養殖由来の個体が自然界に散逸していることが明らかとなり、遺伝的撹乱の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性遺伝子の単離については成長ホルモンと組織適合性遺伝子に加え、今年度は15の表現型に関与すると考えられる遺伝子群の単離に成功し、今後の多型性解析に用いられることが確認できているから。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しており、計画どおり推進すれば最終的な目標は達成できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度当初にマダイの採集、研究打ち合わせおよび実験に使用する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度当初よりマダイの採集、研究打ち合わせおよび実験を行う。
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