研究実績の概要 |
マツバラカサゴ属は主上顎骨の形態によって2つの類似種群(speci es complex)で構成されることが分かった(中央表面に隆起線があるvs.表面は滑らかで隆起線がない).前者には,Neomerinthe erostris (Alcock, 1896)(タイプ産地:スリランカ),Neomerinthe gibbifrons (Fowler, 1938)(フィリピン),Neomerinthe rotunda Chen, 1981(台湾),Neomerinthe bathyperimensis Zajonz and Klausewitz, 2002(紅海)の4名義種が含まれる.現在,これら4名義種はすべて有効種とされているが,過去にそれぞれの比較が行われたことがなく,特徴も明らかになっていなかった.2002年に記載されたN. bathyperimensisは,奇形の1個体に基づいており,原記載の著者らもその点の問題性を指摘していた.N. erostrisは原記載以降,忘れ去られていた名前であり,N. gibbifronsは別属(フサカサゴ属)の有効種として扱われていた.N. rotundaはこれまで有効種として台湾周辺からのみ報告されていた.本年度は主上顎骨の表面に隆起線を有するこれら4名義種をタイプ標本および分布域広域から得られた一般標本の調査(地理的変異の把握)に基づき各名義種の有効性を判断した.標本調査は,実体顕微鏡を用いて行い,分類形質となる特徴は描画装置を用いてスケッチした.また,軟エックス線撮影を行い内部形質の評価も行った.その結果,本類似種群はN. erostris 1種で構成されることが明らかになった.残りの3名義種はN. erostrisの新参異名であると判断された.
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